マモルのミーニージャーニー紀行その2 千川&椎名町編 中編

googleマップはあと一回しか見られない。

僕はざっくりとした順路を頭の中に描いて進んでいた。

基本ずーっとまっすぐいって、どこかのタイミングでめっちゃ右に行く。

まっすぐ歩いていると、不思議な階段があった。

この階段を一般の人は登れない。

きっと高速道路の点検の

仕事についている人にしか登れない。

この場所を僕は何度も通り過ぎていたが、

こんな変な階段があるのに気づいたのは今回が初めてだった。

そして僕はこの階段を見て、右に曲がろうと決めた。

右に進むフェイズに入った僕は

まっすぐとした道を進んでいた。

空を見上げた。鉄板焼きの煙みたいな雲が流れている。

ジュージューと聞こえてきそうな雲だが

実際にはひゅうひゅうと冷たい風の音しか聞こえなかった。

そういえば11月8日は皆既月食で話題だった。

どういう理屈かはよくわからないけど、とにかく月が真っ黒になる。

真っ黒になった月は黒い真珠みたいで綺麗だった。

ちょうどその時僕は上司と外を歩いていて、飲みに行く場所を探す上司の後ろについていた。

その人は寡黙な人で、僕は会話の糸口をなんとなく探そうと月が綺麗なことを言おうとした。

ただ、夏目漱石が和訳してしまった例のフレーズのまま言ってしまうと必ずイジられる。

そこで僕は同じ意味を持ちながらも、漱石が訳したあのフレーズとは似ても似つかない、どころかあのフレーズを想起すらさせない表現を探そうとした。

そして見つけた答えが「アレすごくないっすか?」だった。

疑問形にしたし、指で月を指すことで言葉に月というワードすら登場させなかった。

上司は「あぁー、今日皆既月食か、すげえな」と言った。

見事に上司の頭の中に夏目漱石や、あのフレーズが思い浮かぶことはなかった。

言葉って面白いなと思った。

しばらく歩いているとこんな看板を見つけた。

「フクちゃん ゴミを捨てないでネ♡」

この看板こわ。そんでもって左下のフクちゃんかわい。

恐さと可愛さのダブルパンチで見事にこの辺にはゴミが捨てられていなかった。

やっぱり人の行動を制限するには

こういったユーモラスな手段が効果を発揮するのだと思った。

もっとこんなユーモラスな看板が増えてくれればいいなと思った。

第一話の池袋編でも言ったがこの社会にはあらゆる看板、つまり広告がある。

その無数の広告が飛び込んでくる社会で、僕はバッテリーを低電力にしている。

しかし、こんなユーモラスな広告が増えれば、

低電力にしていても僕はその広告にきっと反応してしまうなと思った。

このフクちゃんの視界にはゴミはひとつも落ちていなかった。

しかし僕は見つけてしまった。

フクちゃんの後ろに一本のタバコの吸い殻が落ちていることに。

僕は思わずその吸い殻を取り上げてしまった。

この吸い殻は偶然にこの場所に捨てられたんじゃなかった。

フクちゃんに見つからないようにここに捨てられたのだ。

ポイ捨てをユーモラスに制限する。

けれどもそのユーモラスな世界に適応して、

ポイ捨てを実行されると

なんだか普通のポイ捨てより、

悲しく感じる。

ユーモラスな注意喚起が少ないのは、

もしかしたら、こういう悲しさを避けるためなのかもしれない。

周りにゴミ箱はないし、ポケットに入れることもできない。

僕は左手にタバコの吸い殻を持ったまま歩くことになった。

僕はトキワ荘ミュージアムに辿り着けるのだろうか?

なんだか不安になってきた。

しかし、ここで奇跡が起きた。

たまたまフクちゃんの隣にあった神社の協賛欄に驚くべき文字を発見したのだ。

それはトキワ通り商店街の文字だった。

トキワ通りの商店街に行ければきっと

トキワ荘ミュージアムがぐっと近くなるはずだ。

僕は神社の人にトキワ通り商店街がどこにあるのかを聞こうと思った。

池袋御嶽(みたけ)神社と呼ばれるこの神社は池袋駅西口一帯の鎮守である。Wikipediaによれば、近年は池袋の袋とフクロウの音が似るところから、苦労を除き(苦労)福を呼び込む(福籠)神としてフクロウのお守りが授与されている。

参拝を済ました後、お守りを売っている方に聞いてみた。

マモル「すみません...こちらの協賛の方にトキワ通り商店街があったと思うんですが...」

オマモリの方「はい。」

マモル「そちらってどこにあるかわかったりしませんでしょうか...」

オマモリの方「あぁ、えっとすみません…トキワ通り商店街はちょっとわからないです...すみません。」

手がかりが0になってしまった。時刻は16時32分。

僕はいてもたってもいられなくなり、このタイミングで最後の1回を使うことにした。

僕はGoogleマップを開いた。開いて僕は驚いた。

ほとんど何も変わっていなかったのだ。

距離は2.9kmから2.7kmになり

時間は39分から35分と4分減っただけだった。

あまりにも状況が変わっていない。

しかし僕はもうこの先Googleマップを見ることができない。

軽いパニックになった。Googleマップに旅の記憶が奪われてしまうことを危惧して

このルールを作ったが、今や完全にGoogleマップに引っ張られてしまっている。

本末転倒である。

記事を書いている今だから思うが、次からはこういう事態になった際は、

このルールを廃止するつもりである。

後編へ続く。

recommends‼

マモルのミーニージャーニー紀行その2 千川&椎名町編 前編

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ミーニージャーニー紀行その1 池袋編

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なぜなら「新しい発見」さえあれば、それはもう立派な旅だからだ。
Googleマップのアプリを閉じて旅に出よう。
ちっちゃなちっちゃな旅に出よう。
ミーニージャーニー
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