マモルのミーニージャーニー紀行その2 千川&椎名町編 前編

「新しい発見」さえあれば、それはもう立派な旅である。

Googleマップのアプリを閉じて旅に出よう。

ちっちゃなちっちゃな旅に出よう。

ミーニージャーニー

今回は第ニ弾「千川&椎名町」である。


千川、椎名町

共に池袋など都心へのアクセスが良く、

家賃相場も良いため、

一人暮らしをする若者に人気の町である。

今日も今日とて僕はなんの目的もなく千川駅にいた。

時刻は15時を少し回ったところ。

ふと工事現場を見てみると、ものすごい砂埃が舞っていた。

太陽の光に照らされた砂埃はなんだかキラキラしていた。ああ、あの中でMUSIC VIDEOを撮ればスモーク要らずだなと考えたりしていた。

どこに行くかを決めずに歩き続けるのは結構怖い。

それは一分一秒でも効率化を求められるこの社会において、

どこに行くかも分からず、何分かかるかも分からない非生産的な行動は

悪しきものと刷り込まれているからだ。

無駄は切り捨てる。

なるべく最短ルートで目的地を目指す。

そういった社会的な態度から見れば、今の僕はものすごく反社会的な存在だ。

だから自分が何か悪いことをしているように怖く感じてしまうのだ。

ぶらぶら歩けば歩くほど、いろいろ気づくことがある。

それでもしばらくすると

「こんなことをして何にもならなかったらどうしよう」という恐怖がやってくる。

大きな道路を歩いているのに、

まるでビルとビルの間を綱渡りしている様な気分になってくる。

そうなり始めたらざっくりとした目的を決める。

なにか美味しいスイーツ食べたいなとか、アートなものを鑑賞したいなとか、

特定の場所を設定するのではなく、解釈に幅を持たせてある程度の自由を確保する。

そうすることで目的がないようであるという落ち着いた状態に持っていけるのだ。

ただいつかは何も考えずブラブラするだけで終わるような旅がしたいと思う。

それができる様な人間になりたいと思っている。

今回は遠くに見えるビルに向かって歩いてみようと思った。

まっすぐ歩いてあの大きなビルに向かって近づいていく。

時折真っ直ぐに行けず、右に曲がったり、左に曲がったりした。

それでも高いビルは一切慌てることなく、僕に居場所を教えてくれた。

かなりハードに色落ちしている洗濯屋さんの看板を見つけた。

バッチリO.K.とはあるがあまりバッチリO.K.じゃなさそうである。

そもそもこのお店の名前はバッチリO.K.なのかが疑問だ。

ただ、この看板は少なくともかなり長い間ここにあって、

それはつまり、このお店がかなり前から存在していて、

今も続いているということを意味していた。

都心に近づけば近づくほど、お店の入れ替わりは激しい。

一見都心は人が多く行き交うし、人の母数が多いから、お店には一定のニーズが保証されていて、あまり潰れない気がする。しかしお店の母数もそれに比例して多いのでお店の入れ替わりは結局は激しくなるのだ。

一方でこういった僻地にあるお店では、どうしてもお客さんが少ない。

それでもこうやって長い間残り続けている。

それはここに住む人たちの移り変わりが激しくなく、

誰もがこの店を強く必要だと思っているからだ。

言ってみればお客さんとお店の間に絆みたいなものがあるのだ。

便利だからその店に行く。

なんだかそこで食べるスイーツは映えるしアガるからその店に行く。

逆にあの店だったら、もっとコスパのいい店ができたから行かない。

全部正しいし、自分も基本はそうやってお店を選んでる。



だけど「絆」があるから残り続けているお店というのは、それはそれで愛おしく思う。

それはまるで僕らが普段使いもしない公衆電話を、

久しぶりに見つけた様な感覚と似ている。

ビルには思った以上に早く着いてしまった。

40分くらいだろうか。

ここに辿り着く頃には夜になるかなと思っていた僕は少し拍子抜けした。

ビルは遠くで見た時よりも小さく感じた。

どうしても手に入れたいものがあって、

必死に頑張って手に入れた結果そうでもなかった時の気持ちって

こんな感じなのかなと思った。

別にどうするわけでもなくブラブラと歩いているとこんな張り紙を見つけた。

ブラブラと歩いていなかったら確実にスルーしていただろう。

次の目的地が決まった。トキワ荘だ。

トキワ荘とはかつて仮面ライダーを作った石ノ森章太郎や、ドラえもんでお馴染みの藤子不二雄などさまざまな漫画作家が住んでいたアパートのことである。

今いる場所からこの場所はどれくらい離れているのだろう。

Googleマップを開いて検索してみた。

ここから約3キロである。徒歩にして37分。

張り紙によればトキワ荘ミュージアムは17:30が最終受付である。

現在時刻は16時14分。このGoogleマップに従えば余裕で辿り着くだろう。

しかし僕は考えた。ちょっと進んではこのマップの画面を見て、

またちょっと進んではこのマップの画面を見る。

それってこの2.9キロの道中全ての記憶が、

このマップに沿って歩けたかどうかという記憶でいっぱいになってしまうのではないか。

それは避けたい。

できればこのマップに頼らずに辿り着きたいなと思った。

そこで私はルールを作った。

まず行きたい場所を指定してGoogleマップで順路を見る。

そこから先再びGoogleマップを確認できるのは1回限り。

それ以外は自分の足でその場所を目指すしかない。

要はGoogleマップを見て良いのは2回までということだ。

私は特に深く考えることなくこのルールを勝手に成立させ、勝手に可決した。

だがこのルールが後に私を追い詰めることになるとはこの時点では想像もしていなかった。

中編へ続く。

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ライター:マモル
旅ってなんだろう。
飛行機を使えばもちろん旅。
知らない場所で一泊すればそれもまた旅。でも旅はもっと身近にあるはずだ。
なぜなら「新しい発見」さえあれば、それはもう立派な旅だからだ。
Googleマップのアプリを閉じて旅に出よう。
ちっちゃなちっちゃな旅に出よう。
ミーニージャーニー
今回は第一弾「池袋」である。

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