杉咲花・若葉竜也『アンメット ある脳外科医の日記』のここが好き!ドラマ好きライターが語ります!!
SNSをはじめとして、大きな話題を呼んだドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。丁寧に紡がれる物語、杉咲花さん・若葉竜也さんをはじめとする俳優陣のリアルで緻密な名演が、多くの人々の心を強く照らしてくれました。6月24日に圧巻の最終回を迎えた本作を、ドラマ大好きな掬-kikusuku-メンバー4人が振り返り!『アンメット』ロスの皆さん、まだまだ共に『アンメット』の余韻に浸りましょう!
『アンメット』のここが好き!
川内ミヤビ、その生き様。
ミヤビ(演:杉咲花)は後遺症で記憶障害を抱え、それを乗り越えられてないと語っていながらも、今日を明るく振る舞い、生きていく強さを持っています。それは単に楽観的というわけではなく困難と付き合える強さであり、ミヤビの軽やかで明るい生き様は”光”そのものでした。
そんなミヤビの姿は、ケープタウンの隔離施設で三瓶(演:若葉竜也)に「不安じゃないんですか?」と問われた時に「不安です。でも、自分の中に光があったら、暗闇も明るく見えるんじゃないかなって。だから、おなかが空きます」と答えたミヤビにも言えることです。記憶障害を負う前も今も、川内ミヤビという人間は人々の心を灯す存在で、我々視聴者の心までも灯してくれました。
とにかくみんな愛おしい!ミヤビだけじゃない、患者さんもその家族もスタッフ達も、一生懸命その時を生きている姿が愛おしくて好きです!
小さな相槌。
「記憶が消えても、消えないもの」を、私たちに「体感」させてくれたこと。
また「人が人を想うあたたかさ、強さ、優しさ」を一様でない形で示してくれたこと。例えば「ミヤビを助けたい」という気持ち一つ取っても、三瓶先生、大迫先生(演:井浦新)、星前先生(演:千葉雄大)、綾野先生(演:岡山天音)をはじめとした一人ひとりに気持ち・考え・立場・行動・言葉があり、それぞれの「思いやり方」があり、そのどれも唯一無二で、特別で。
恋人として、婚約者として、同僚として、先輩として、後輩として、友達として……色々な「愛」に溢れている作品でした。
特に印象に残っているシーンは?
第5話。食堂で星前先生がミヤビに母の病気のことや自身の目指す医者像を語るシーン。感情が昂って星前先生が台詞を噛んでしまったカットがそのまま使われていた所。このドラマは一貫して登場人物みんなが本気でその世界を生きている感じがしてそこが好きだったけれど、このシーンこのカットはそれが顕著に表れていた気がして、観ていて心にグッと来るものがありました……!
9話のラストシーン、ガトーショコラ…選べません!全話の全シーンがこの身に残っています。
素晴らしいシーンがたくさんあって選びきれませんが、最終回の寝ている三瓶のそばにミヤビが来て、愛おしそうに頬や髪を撫で、涙を流すシーンは特に印象的でした。日記を手にしていたので、きっと日記を読み、これまでの三瓶との出来事を覚え直した直後だけれど、日記から得た情報以上にミヤビの心は動き、それが涙として現れたように見えました。まさに「記憶がなくても、強い感情は覚えている」ことが表現されたシーンでした。セリフはなく、物音とミヤビの嗚咽だけが聞こえるシーンでしたが、静寂が際立つからこそ引き込まれ、感情を揺さぶられました。
ミヤビと三瓶先生が二人で道を歩いている風景。手には、時に抹茶パウダー多めのコーヒー、時に生クリーム入りのコーヒー。ミヤビが焼肉丼を口いっぱいに頬張る顔。日常の煌めきが愛おしく、脳裏に焼きついています。
まだまだ語り足りない……!
『アンメット』の魅力
長細いグミ、居酒屋「たかみ」、焼き肉丼、豚足、ロールキャベツ、会長のゲテモノ、ヨーグルト……『アンメット』では食べ物が登場するシーンが多くありましたが、まさか食事がこんなにも感情を揺さぶり、伏線になっているとは、序盤では想像もしていませんでした。1話で三瓶が海外の長細いグミを食べている様子を何気なく、いや、変わり者なんだなと思って観ていましたが、今思い返すと一体どれほどの想いを抱えてそのグミを食べ続けていたか、ミヤビに勧めたのか……
そして、いつも本当に美味しそうに、幸せそうなミヤビの食べっぷり!!「おなかすきましたね」「おいしいともっと幸せになります」とよく口にしていて、それはミヤビの愛らしさとしても捉えられますが、今日を懸命に生きるミヤビの”生命力”を感じさせるようでもありました。
他にも言及したいことはいくらでも出てくるくらい『アンメット』は本当に心を動かされる作品でした。
きっとドラマ史に残る名作として語り継がれていくだろう本作を、リアルタイムで視聴できたこと、毎週楽しみにして、1話観るごとに1週間かけて咀嚼する3ヶ月を過ごせたこと、私の心を灯す作品に出会えたことを本当に嬉しく思います。
『アンメット』というタイトルと呼応するような「光」の使い方が印象的でした。画面としての光(明るさ・照明)が柔らかく、美しかったこと。ミヤビと三瓶先生を繋ぐキーアイテムの蝋燭、その炎と影。そして「自分の中に光があったら、」と語るミヤビ。
例え思い出すことができなくても、自分の中の光は灯し続けられる。この世界には「アンメット=満たされないもの」が、どうしても生まれてしまうけれど、一人ひとりが自分の中に光を灯していれば「影」を無くすことができるかもしれない。
その明かりを灯す火種を、私たちはこのドラマから受け取った気がしています。大切に大切に、抱き締めて灯していたいです。
キッチンで家族が皿を洗っている...…リビングでこの作品を見ることができているということがとても嬉しかった。毎週楽しみにする時間が忙しない日々を留め置いてくれること、一ミリも身体を動かせない緊張感がテレビ画面から伝わって、自分の耳がどんどん熱くなっていくのを感じること、出てくる人たちが本当の友のように愛しくて、そのあったかさに涙が出ること……連続テレビドラマを好きでい続けると、こういうご褒美みたいな瞬間に出会える。この世界にこの物語を届けようとした人たちがいて、それを私はいま受け取っている!生活の中に浸透する連続テレビドラマという場で『アンメット』を届けてくれたことを、心から感謝します。
ぜひ、あなたの感想もコメント欄やSNSにて聞かせてくださいね。掬-kikusuku-では、名作揃いだった2024年4-6月期ドラマをまだまだ振り返っていきますよ!次回もお楽しみに!
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