「雑草という草花はない」ことを体現!NHK朝ドラ『らんまん』第16週「コオロギラン」感想レビュー

第16週『コオロギラン』(7月17日~21日放送)
第16週レビュー 〜弱さも自分の特性だから〜
「俺、窒息するんだ。これ以上あそこにいたら息の仕方も分かんなくなりそうで」(藤丸)
万太郎(演:神木隆之介)の元を訪れた藤丸(演:前原瑞樹)は、大学を辞めたいと打ち明ける。競争の世界に息苦しさを感じていた藤丸は、進むも戻るも地獄と思われる苦しみの中で、一人身動きが取れなくなっていた。
「見えるものを見ていると、その先にもっと見えないものもあるはずだってことが気になってくるんです」(波多野)
一方、研究の道に進むと決めた波多野(演:前原滉)もまた、自らの志した世界に一人向き合おうとしていた。見えるものの先には、一体何が存在しているのか。この研究の先に一体何があるのか。自分が何を探しているのかすら分からない、果ての無い旅だ。
「君は何を見ているんですか」(野宮)
波多野の見ようとしている世界に、一歩足を踏み入れた人物がいる。画工・野宮(演:亀田佳明)だ。万太郎の描く「学者の絵」や田邊(演:要潤)の圧力によって、彼もまた自分の道を揺さぶられていた。野宮は決死の思いで、波多野に顕微鏡の使い方を教えてほしいと頼む。
見えるものから見えないものへ、そして命の源への探究を夢見る波多野。
「画家」として、命の源を見、描いてみたいと心震わす野宮。
見えないものに心惹かれる自分だからこそできる研究を。画家の自分だからこそ描ける絵を。
孤独と孤独の淵で、二人は手を取り合ったのだ。
「草花とおんなじじゃ。優しい人、楽しい人、いっぱいおる。けんど、おんなじ人は一人としておらん」(万太郎)
同じ人は一人としていない「自分」を、私たちは日々生きている。
例えば、
落第し、好きな人に貢ぎ、小説を書き続ける人。
「これでいい」理由を300個集めてもなお、痛みを抱えながら生きている人。
身の丈に合った暮らしの中、辛い時はすぐに逃げる選択をするのが性に合う人。
自分の「好き」に向かって一直線に進む人。
人は皆、自分だけの「特性」と共に生きている。
「今知れたからには探したらえい。この世にただ一つの、藤丸次郎の特性に合うたやり方を」(万太郎)
自分の特性に気が付くこと。知ること。向き合うこと。自分の「好き」「嫌い」「得意」「不得意」……と、どう付き合っていくのか。
人生とは、そのトライ&エラーを繰り返す営みなのだ。
「弱さも、よう知ったら強みになる」(万太郎)
藤丸の優しさ・穏やかさが、周りや自分自身を救うこともあるだろう。
他の誰でもない野宮の絵だから、波多野は自分に必要だと感じたのだろう。
一見「弱さ」のように思えることも、自分を自分たらしめる大事な要素だ。自分の特性に合った、自分だけの生き方を模索し続けることで、人は自分だけの「金色の道」をつくっていく。
レビューあと書き
今週は、万太郎の周りの人々にもかなりスポットライトが当たった週でした。まさに「雑草という草花はない」ことを体現するかのように、この作品は登場人物みんなが生き生きとしていますよね!
万太郎は自分の「好き」がはっきりとしていて、特別な人のように思えます。しかし、万太郎の突出した才能も、あくまで彼の特性です。(その特性故に、恵まれた環境を手放したり、道なき道を歩いたりする選択を取ることとなりました。)
人には人の「強み」が「苦しみ」が「喜び」があります。その中で自分をどう受け入れ、どう自分を生きていくのか。そんな問いを『らんまん』は私たちに投げかけ続けている気がします。
藤丸も波多野も野宮さんも、自分の強みを愛して生きていけますように!
細かすぎる!?「らんまん」なときめきポイント
・藤丸の塩の振り方!!!
・寿恵子(演:浜辺美波)オタクな佳代ちゃん(演:田村芽実)!
・万太郎と寿恵子のキスシーンの美しさに触れないわけにはいかないでしょう……。普段は可愛らしいカップルなのに、急に艶やかになって……もう……。
・そんな二人の頭上に広がる無数の紙たちが風になびく様も綺麗でしたね!「絶景」と笑い合える二人が大好きです。佳代ちゃん、一緒に推し活しよ〜〜〜〜!

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。