「学ぶ」とは何か?ーNHK朝ドラ『らんまん』大窪(演:今野浩喜)の告白から読み解く【第15週「ヤマトグサ」】
第15週『ヤマトグサ』(7月10日~14日放送)
第15週レビュー 〜学ぶとは、人生だ〜
「信じてもらえんかもしれんが……俺は今初めて植物学を学びたいと……」(大窪)
「学ぶ」とは、何だろうか。
大窪(演:今野浩喜)は、万太郎(演:神木隆之介)の住む十徳長屋を訪れ、本音を吐露すると共に新種植物の共同研究を申し出る。
大窪は、いわゆるエリート街道から外れないよう、必死に植物の知識を身につけ、教授に気に入られるよう努力してきた。そんな大窪にとって、学歴に関わらず、ただ「植物が好き」という一心だけで植物学に励み、次々に新種を発見していく万太郎の存在は衝撃的だったのだろう。
彼の姿を見て、触発を受けたのは大窪だけではない。
例えば、授業に着いていくだけで疲弊していた波多野(演:前原滉)と藤丸(演:前原 瑞樹)は、万太郎の植物への熱意に感化され、能動的に生き生きと研究へ勤しむようになった。
助教授の徳永(演:田中哲司)は、東京大学という権威を守ろうと、当初は万太郎の存在に反発していたが、今では万太郎たちの研究をあたたかく見守り、教授である田邉(演:要潤)に「今私たちがすべきことは槙野に礼を言うことですよ」と諭すまでになった。
最初はみな、植物を学びたかったわけではないのかもしれない。他に行き場がなかったり、競合の少ない分野なら何でも良かったり、出世のためであったり、実績のためであったり……。
しかし、人には人の得意・不得意があるように、人には人の「好き」がある。置かれた環境の中で、自分の「得意」や「好み」が見えてくる。
「どうしてここへ来たかより それでもみんなあ今ここにおって今日も植物学を生きゆう。それだけでえいがじゃと思います」(万太郎)
植物学を生きる中で、自分の得意なことは何か。苦手なことは何か。植物学を生きながら、自分が心惹かれるものは何なのか。大事なのは「今」だ。万太郎のように端から「好き」に出会うことができる人ばかりではない。しかし、今何に喜びを感じているのか、好きの種を見つけていくことはできる。
「学ぶ」とは、知識に触れて、より広い世界を知る中で、自分が「もっと知りたい」と感じる好きの種を見つけ、それをより深く掘り下げていく、その繰り返しの営みのことではないか。
好きの種。自分が心動かされるもの。
それは、大窪にとっての「マメヅタラン」であり、藤丸にとっての「スッポンタケ」であり、波多野にとっては「植物の成り立ちそのもの」であり、徳永にとっての「ユウガオ」であり、田邊にとっての「シダ植物」である。
田邊は、自らの名を上げることに躍起となり、焦りの中にいる。彼は、トガクシソウのことを「好き」だったのだろうか。もっと「知りたい」と欲していたのだろうか。
田邊が本当に欲しているものは何であろう。地位か名誉か、成功か、新種と出会う喜びか、研究に没頭する喜びか、共に研究する仲間か、妻と安らげるひと時か……
「好き」を見つけるとは、自分の生きていく道を探すということだ。
「お前も、お前の戦をしてるんだろう?」(倉木)
「好き」の先には「学び」があり、その先には自分の生きる道が続いている。その道を探し、道なき道を歩み続けること。それは自分だけの戦であり、生きる喜びそのものなのだ。
レビューあと書き
ついに自らの手で新種を世界に発表し、図版を完成させた万太郎!!「印刷機」を購入しようと思い切る寿恵子(演:浜辺美波)と二人三脚、これまでの道のりを思うと本当に嬉しいです!二人に協力してくれる長屋の皆さんも愛おしく、万太郎に触発される植物学教室のメンバーも応援したくなります。田邊教授もみんなと笑える日が来ると良いなあ……。
そして、今週のハイライトは大窪さんと倉木さん(演:大東駿介)ではないでしょうか?大窪さん、あれだけの葛藤を素直に言葉にし、万太郎に頭を下げられることに感動するし、万太郎と共同研究している時の生き生きとした表情!!!きっと、偉大な研究者になることでしょう。
「痺れる〜〜〜〜〜!」と思ったのは倉木さんから100円を返してもらった場面!これだけの時間をかけ、万太郎と倉木さんの変化や積み重ねを経て、ずっと使わずに取っておいた100円を返す……(涙)。万太郎が100円を渡した時の回想の倉木さんと今とでは、まるで顔つきが違ってハッとしました(お髭も無くなっていたのね!)
細かすぎる!?「らんまん」なときめきポイント
・印刷所の皆さんの登場も嬉しかったですね!万太郎を見て思わず顔が綻ぶ職人さんたちも、寿恵子を「天女」と言い、挙動がオタクな佳代ちゃん(演:田村芽実)も可愛かった〜!
・万太郎や大窪さんを見守る徳永助教授の目がもう優しくて優しくて!田邊教授にガツンと言ってくれたことも含め、序盤からのギャップ萌えがすごい!
・倉木さんの筋肉美〜!背中の傷を隠すこともないのが泣けます
・万太郎と寿恵子の住む部屋の壁をみんなでぶち抜く!!!大胆で、なんだか気持ち良かったです!壁の穴が無くなってしまったのは「情緒的に惜しい」(by 波多野)ですね……(笑)
・第15週の締めくくり、寿恵子がどんな言葉で妊娠を伝えるかと思ったら、万太郎の表情と三本のタンポポだけで表現するなんて……ニクイ演出!!!まんちゃんすえちゃん、ご懐妊おめでとう〜!!!二人の「植物中心」な生活がどう変わっていくのか、来週も楽しみです!
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。