アップデート

この時期になると、テレビやラジオ、雑誌など様々な媒体で「新生活にちなんで——」の言葉と幾度も出会う。昨日はラジオで、今日はYouTubeで耳にした。

そういう季節になったことに気づかされると同時に、私の生活には変化がないことを実感させられる。kikusukuのライターを始めたので、何も変わっていない訳ではないけれど。

学生時代は一定のリズムで、新生活を迎えていた。
入学、進級を何度か繰り返し、卒業、そしてまた入学……
新年度が来るたびに、私を取り巻く環境は変化した。

環境が変わることへの期待感もあったが、新生活を迎える時はいつも不安と隣り合わせだった。余計なところまで想像を膨らませてしまい、怖くて眠れないこともしばしばあった。

社会人になると、その繰り返しがなくなった。

もちろん、異動や転職、仕事以外のことも含め、どこかしらのタイミングで新生活を迎えることはあるだろう。しかし、少なくとも学生時代ほど短期間で環境が変化し、それを繰り返し続けることはそう多くはないと思う。

実際、社会人3年目になる私は、現在の部署に参入して以来大きな変化はなく、非常に安定した生活を送れている。今後しばらく異動もない。新生活に潜む厄介者と当分戦わなくていいんだ！と気づいた時は、思わずホッとしてしまった。

ところが今年に入ったあたりから、変化のない日々、変化の予定がない日々を退屈に感じ始めた。眠れないほど変化に怯えていた私が、変わりばえしない生活を続けるうちに、新生活を羨望するようになっていた。

一つ上の先輩が転職したことも心情の変化に関係しているかもしれない。年の近い人が自ら新生活を選んで進んでいった。すごく前向きに将来を考えての選択だった。

とはいえ、今すぐに転職するつもりはないし、近い将来に一人暮らしを始めようとは思っているが、それも今ではない。

大きな変化ではなくても、とにかく何か生活に新しさを取り入れたいと考えた結果「そうだ！習い事でも始めよう」と思い立った。

それからは、楽器を始めようとか、ピラティスやスイミングに通おうかとか、やってみたいことを思い浮かべ、その度に調べた。この時期に習い事関連のサイトを開くと「新生活応援キャンペーン」の文字をよく見かけた。新たに始めるには絶好のタイミングではないか！

まずはひと通り、無料体験レッスンに行ってみて、先生や教室の空気感や、通える距離感かどうかなどを確かめてみよう。そう心に決めながらも、私の余計なことまで考えてしまう癖が出てきて、足を止めてしまった。

......いや、これは言い訳にすぎない。生活に新しい何かを取り込む勇気がないだけである。ここにいるのは、ただの臆病者だ。

１ヶ月ほど前、ここに書き記したようなことを友人に話した時に「今すぐやらないと、ずっとやらないよ」と言われた。その通りだった。

新しいことを始める時は、あれこれ考えて不安になったり、身構えたりしてしまうけれど、経験上そういうのは大抵杞憂に終わる。今すぐ飛び込む勇気、必要なのはただそれだけ。「エイッ！どうにでもなれ！」と飛び込む勇気さえあれば良いのだと思う。そう書きながら、自分に言い聞かせている。

そもそも、今から飛び込もうとしている先は、何も新生活というまでもない、ちょっとした変化だ。生活にほんのり彩りを加えるようなものである。不安がることはないはずだ。

少し先の私は、無事に生活をアップデート出来ているだろうか。

しばらく様子を見て、何も変わっていなさそうだったら......
思い出した時でいいです。私の背中をちょっとだけ押してやってください。

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