凪と台風

“台風”のような半年間が終わった。

昨日までモニターと仕事用のPCが2台が置かれてギチギチだったデスクは、こんなに大きかったのかと驚くほどに広々としている。


半年前までの私の社会人生活は”凪”だった。

お酒を飲まなければ穏やかな上司と、几帳面で言葉数の少ない先輩と私の3人で、3人でやるほどの量ではない仕事を、のんびりとこなす日々が続いていた。

残業しなければならない日も数えるほどだったし、誰かに腹を立てながら、目の前の仕事をとにかくこなすようなこともなかった。

知識や技術が必要な仕事ではあるから人並みのキャリアは築けているし、人間関係も良好。決して悪い環境ではなかったとは思う。世の中にはこれが欲しくてたまらない人もきっといる。

が、私にはどうも物足りなかった。

”凪”な日々に耐えかねた私は、環境を変えるために転職を決意した。

2年前に書いたエッセイで「今すぐに転職するつもりはない」と書いていたが、遂にその時がやってきた。それが今から半年前のこと。

アップデート

この時期になると、テレビやラジオ、雑誌など様々な媒体で「新生活にちなんで——」の言葉と幾度も出会う。昨日はラジオで、今日はYouTubeで耳にした。 そういう季節になっ…



ところが、それと時を同じくして、急遽プロジェクトを移動することになった。それが”台風”の始まり。

突然放り込まれた私が何も分からないだけでなく、全員手探り状態でプロジェクトが進行していて、業務上達成すべきことのために、自らの手で道を拓いていくような日々が始まった。

何故か同じチームにいる年齢も社会人歴も全然上の人の尻拭いをすることも度々あったし、チームのまとめ役の効率悪さに口を挟みたくなることもしょっちゅう。何度、心の中でブチ切れながら仕事をしたことか。

(そして驚くことに、辞める1週間を切った時まで、そんな日々が続いていた。)


“凪”の時とは打って変わり、感情も体力も消耗しまくっていたが、それでも私は、とにかく忙しなくて、状況の移り変わりが激しい”台風”のような日々が好きだった。

自覚はしていたけれど、心底暇が嫌で、やるべきことが沢山ある状態が心地良い人間なんだと実感する半年間だった。本当に充実していて、活力が漲っていた。


そう振り返りながらも今日、私は新卒から4年間勤めた会社を退職した。この”台風”ともおさらばだ。

この決断をした理由は色々とあるけれど、”凪”と”台風”を経験して考え抜いた結果、別の”台風”に巻き込まれにいくことにした。なんとも私らしい選択だろう。


それにしても、偶然にも放り込まれた”台風”で得たものは私にとっては大きくて、よく分からない状況ではあったけれど、良い経験だったと思えている。

私の退職を心底惜しんでくれる同僚とも出会え、今後も交流を続けようと声をかけてもらった。“凪”の日々を送っていた私からは想像もつかない今がある。

「環境のせいにするな」とよく言うけれど、環境次第でこうも私の生活が変わったのだから、どのような環境に身を置くかは、ちゃんと自分で選んでいくべきだと思う。

まぁ、”凪”から”台風”はあまりにも環境が変わりすぎていたけれど。


最終出勤を終え、会社を後にする時は、もっと開放感だったり、あるいは喪失感だったり、そういう大きな感情が湧き出てくるものかと思ったけれど、あまりにも日常だった。

台風が過ぎ去ったというのに台風一過には出会えなかったなぁなんて思いつつ、いつも通り帰路についた。

4月から始まる日々はきっと”台風”であることが分かっているからこそ、しばしのお暇は、半年ぶりに”凪”な日々を過ごしてみるのも良いかもしれない。

photo I took/
こんぶ

kikusukuライターの「こんぶ」です。アイドルとドラマとお酒を飲むことが好き。ラジオもよく聞く。好きが多すぎて、毎日忙しなく生きてます。

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