真っ暗な中でも、時々花火を焚いて
社会人になって、
自分がこんなにも残業と仲良しこよしの生活を送るとは思っていなかった。
残業は、組織に対する貢献であり、私に対する自己犠牲。
それ以上でも以下でもなく、どこへも広がっていくことができない。
そういう時間が自分の身を包み、灰色の気持ちが胴体に満ちて、背中が鈍~く丸まっていく。
最近いつもそう。仕事を頑張っている自分への誇りも霞む、重くて真っ黒な夜。
「花火!!したいです!!!」
そういう時間をブチ破るなら、
これくらい突拍子もないことを言ってくれる友達がいないといけない。
社会人になってからへこたれかけた時、
大学時代に出会った人たちは、こうして私に大切なよろこびを思い出させてくれる。
仕事終わりだろうとなんだろうと、私はこの夜この人たちと花火をすると決めたのだ。
キーボードの上でパチンパチンと弾ける私の指先から火花が散り始める。
19時45分、19時50分、19時55分……
20時!!!!!
打刻した手を後ろに残した姿勢のまま、
階段を駆け下り、
ビルを飛び出して、
電車のドアまで駆け込んでいく。
「おつかれさま〜〜〜!!!!!
公園入り口の左手すぐあたりで花火を探してくれ〜!!!」
このLINEを見た直後、驚くほど自然にみんなと合流した。
少し遅れて輪に加わった私を気遣って、みんなは何本も花火を残しておいてくれた。
色の変わるやつ、
喉がきゅっと閉まるような煙の出るやつ、
次々に火をつけていく。
「会おうと思えば会えるもんだね……」と口々に言うみんなの顔が手元からチラチラ照らされていた。
どうにもならないと思っている日々も、この瞬間も、
結局は自分があれこれと選択したことの連なりで出来ているのかと、
みんなの顔を眺めながらぼーっと考えていた。
一生懸命働く、
なにかを深く学ぶ、
その中で立ち止まって誰かと花火をする。
それらは全部「選べた」から私たちの目の前に広がっている時間だった。
生きていると選んだ覚えのないものもしょっちゅう眼前に飛び出してくるのだけれど、
これからも私たちはいくらかの瞬間を選んで進んで行くのだと思う。
だとしたら真っ暗な中でも時々花火を焚いて、
「いいねぇ」と一緒にそれを眺めていられる人たちのことを大切にしないといけない。
あと何よりこういう場で飲む、蓋のついた缶のレモンサワーほどおいしいものはないと学んだ日のお話でした。