マモルです。自己照会。


「なぁなぁ、お前マモルの事どう思う?」

「おぉーなんだよビビったわ〜」

「てかそもそもマモルって知ってる?」

「いやそれは知ってるよ、映像身体学科に所属してたやつっしょ?」

「そう」

「で、結構活発に映像作品とか作ってたんでしょ」

「そう、映画6本」

「多!大学って4年でしょ?年1ペース超えてるじゃん」

「そう、そいつ結構やりすぎたって嘆いてた」

「うへえー俺だったらもうちょい青春したいと思っちゃうなー、夜の縁日で友達と焼きそば食べたりさ、ディズニー行ったり?」

「まあ、でも映画6本も作ったら、結構それはそれで充実してるし、あいつも満足なんじゃない?俺だったら、よく頑張ったなぁ〜すごいなあって思うけど」

「そっか。まぁそうかも。でもたまには俺みたいな気持ちになるんじゃない?」

「たまにはなるかもね」

「うん」

「ありがと、答えてくれてサンキュー」

「なんだそれ、まぁいいや、てか明日ふわふわのパンケーキ食べに行こうぜ、茶香ってとこでめっちゃ映えるし、うまいぜ」

「あぁ、じゃああとでLINEして」

「りょっけー」







「え?マモルくんについてどう思うか?」

「そう。どう思います?」

「んーいい人になりたいんだろうね」

「いい人じゃないんですか?」

「ないよ。少なくとも私はそう思う」

「どうして?」

「結局自分のことしか考えてない気がする」

「そうなの?」

「やっぱりさ、いい人になったら人が集まるじゃん、でもそれを見越していい人になろうとするのって、全然いい人じゃなくない?」

「それ本人に言ったら傷つくと思いますよ……」

「私は自分が傷付いたよ。あの人の優しさに。

いっぱいいる中の1人みたいな扱いされてる感じがしちゃって、傷ついた」

「ごめん……なんか謝らせてほしいです」

「いやいや、なんで君が謝るの。あなたは違うでしょ。

ちゃんと私に向き合ってくれてるよ。この前だって夜中に話聞いてくれたじゃん」

「いやいや、それはマモルだってやってると思うけど」

「あの人は形だけ!」

「俺と変わんないと思うけど……」

「そう?まぁ、私はそんな感じかな〜じゃあね〜」







「マモルくんかぁ。なんだかもう少しゆっくり人生を生きてもいい人な気がするなぁ」

「あなたはごろごろしすぎですよ。起きているところ見たことがないですよ」

「すまんが。ちょっとそこの麦茶をとってくれ」

「はいはい……」

「でも彼は極端に生き急いでいるよ。毎年映画を作って、それに加えて先輩の映画制作にも参加したり、後輩の映画制作にも協力したり、同時にピンボーカルとしてライブをしてたり、もう怖いくらい毎日必死じゃないか」

「まぁー毎日家に帰ったらクタクタですぐにバタンQしちゃってるイメージはありますね」

「そうだろうそうだろう。私じゃあるまいし」

「あなたではないですよ」

「だからね。私は思うんだ。彼はもうちょっとゆっくり人生を生きてみてもいいんじゃないかって、それこそ、作品を作ることが全てじゃないだろ?作り続けてたら、いつか干からびてしまうよ」

「そうですねぇ……でも彼は、それでも結局作品を作ってますよねえ。この前なんか社会人になっても30秒のショートムービーを作ってましたよ」

「また作ったのか!もはやそこまでくると性なのかねえ……」

「どうなんでしょうねえ、でも休みたいとも言っていましたけどねえ……」

「でも休まないんだろうなあ……」

「どうすればいいんでしょうねぇ……」

「もっと君がしっかりそばで見てやらないと。

肩車してもらって0距離でそばにいてやりなさい。」

「いやおかしいでしょ!」








「君は知っているかい?」

「え?」

「彼はなにも映画を作る人ってわけじゃないんだよ。

彼は映画を作るずぅっと前からこの世界に存在している。

僕は映画を作る前の彼を知っているんだ。

興味はあるかい?」

「ありますよ!彼はどんな人だったんですか?」

「そうだねぇ……彼は常に周りを気にしながら生きていたよ。常に自分がいる空間のバランスを考えていたんだ」

「バランス?」

「例えば、彼は姉と弟の間にいた子だろう?弟には自分の物を貸さないといけないし、姉の言うことは大抵絶対だった。誰もが不愉快にならず、自分のいる空間が居心地のいいバランスを保てるように無意識に行動してたんだ」

「そうだったんですか……けど確かに今も空気を読む力が人一倍強い気がしますね……」

「中学でも高校でもクラスの中で目立たない方だったよ。目立つ人たちが十分いたからね。彼はバランスを取ったんだと思うよ。けど段々と自分のやりたいことが溜まっていって、大学で爆発してしまったんだろうね。バランスを取ることをやめたのさ」

「それが映画の監督だったり、ライブのボーカルだったりということだったんですか?」

「そうだねぇ。ただ僕はどっちの彼も好きだけどね。もっと言えばどんな彼も好きだよ」

「すごいですね……」

「人は誰しも、自分を肯定してくれる存在が必要なんだ。そうして存在意義を保つんだ」

「存在意義……ですか」

「ところで……彼は今幸せなのかな?」

「幸せ……なのかですか?」

「そう。それが心配でね」

「……」

「君はどう思う?」

「え?」

「色々な人の話を聞いただろう?きっとそれは彼の耳にも入ってしまってると思う。だから彼は今どんな気持ちなんだろう。」



「彼は今。幸せだと思うかい?」

「……そうですね。

幸せだと思います。」

「そうか。ならよかった」

っていう人たち。

※この物語は全てフィクションです※

マモル

マモルです。作品を見ること、作ることが大好きです。ちょっと気を抜くとすぐに、折り畳み傘に髪の毛がひっこ抜かれてしまいます。気を引き締めて毎日生きてます。生き急ぎ過ぎないように。

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