終わりから始める

“始まったら終わっちゃうんだよ”

先日上演した作品で、こんな台詞を書いた。
続けるとは、終わりに向かうことだろうか。それとも、終わりを避けようとすることだろうか。

「続ける」ってすごく難しい。続けたくても終わっていったものたちを無数に見送ってきた気がする。

“まあそれはね、しょうがねえよ”

冒頭の台詞への返答はこうだった。

「終わり」を受け入れること。それもまた「しょうがない」ことなのだろうか。確かに折り合いをつけるしかないことはたくさんある。けれど、何か、ただ受け入れるだけではなくて、その「終わり」へ寄り添う方法があるのではないか。

私たちが「しょうがない」と割り切る時、その諦めが、優しい諦めであってくれたら。
そのための言葉を、私はまだまだ探さないといけない。

“でも、終わるからまた始まるんだよ”

もし、あの台詞が私の書いたものではなくて、ふいに誰かから投げかけられたものだったとしたら、私はきっとこう返しただろう。

終わる、そしてまた始まる。
それって、ずっと続いていくということかもしれない。

「続ける」には努力がいる。

一つ一つを丁寧に終わらせて、また始めて、たくさんの終わりと始まりを積み重ねていくこと。終わってから、また始めることができるかどうか。始めたいと、続けたいと願うことができるのかどうか。あるいは、大切に思い「続ける」ために終わらせる選択をするのか。

「ずっと続けばいいのに」
そう思えることって、すごく幸せで、奇跡みたいなことだ。

「続けなきゃ」
そう感じる時、きっと終わりへと歩み始めている。

「続けている」ということはつまり、終わらせないことを、辞めないことを、止まらないことを選び続けている、ということだ。
それは私たちが思っている以上にきっとすごいことで、一つ一つの選択に目一杯の勇気が詰め込まれているんじゃないだろうか。


私たちはいつも、終わりか始まりを選び続けている。日々を続けるために、大切なものを抱きしめ続けるために。何を終わらせて、何を始めて、何を続けようとするのか?

“なんかさ、もはや選ばされてるよね”


そんな終わりと始まりを、私たちは続けていく。

ひなた

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。

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