唯一の寂しさは一人暮らし
「寂しさ」をあまり感じたことがない……気がする。ありがたいことに。
唯一あったとしたら、初めて一人暮らしをした時ぐらいだろうか。
とにかく早く自立がしたかった私は大学4年の2月、卒論を書き上げてもいないのに実家を飛び出した。一人で暮らせる!きっと大丈夫!!という謎の自信を持っていた。
しかし一人暮らしをして、初めて自分ひとりだけの空間を手に入れたとき、嬉しさと同時に「寂しさ」を感じたのを鮮明に覚えている。自分以外に人気のない静かな空間で無音に耐えられそうになかった。
生まれてこの方、人の気配がしない空間に居たことがなかった。実家では母が専業主婦で家に常に居たし、自室は襖一枚向こうに両親の部屋があるような空間だった。

おかげで常にラジオや音楽を流す生活が始まった。自ら配信アプリで配信してみたり、かまってくれそうな友人を見つけたら即通話をしたり……と、話し相手が欲しくて仕方なくなることも多々あった。とにかく人の気配が自分以外にない空間に耐える努力をした。
が……やはり人が恋しくなってしまうものだった。毎週末家に友達を呼び「ただ居てくれればいいから!!」と言いつつ家事を手伝ってもらうのが定番化していた。かつ私は友達のためにご飯を作り、一緒に食べてもらうことで一人の「寂しさ」を紛らわせていた。
結果1年ほどで実家に戻ってしまったけれど「寂しい」という感情をひしひしと感じられたのはその時ぐらいかもしれない。実家に戻ってからは人と暮らせるありがたみを感じるようになった。いつまでも親に甘えているわけにもいかないし、そのうちまた実家を出ようとは思う。が……一人暮らしは二度としたくない。そう思ってしまうくらい私にとって相当「寂しい」経験だった。

捺稀(なつき)と申します。親から授かりし本名です。
好奇心の赴くままに生きているその辺の会社員です。映像身体学部ではなく、INIAD(東洋大学情報連携学部)出身です。
kikusukuを通じて、好きなもの・こと・人の繋がりを広げていけたら良いなと思っています。よろしくお願いします!