ミーニージャーニー紀行その1 池袋編

旅ってなんだろう。

飛行機を使えばもちろん旅。

知らない場所で一泊すればそれもまた旅。でも旅はもっと身近にあるはずだ。

なぜなら「新しい発見」さえあれば、それはもう立派な旅だからだ。

Googleマップのアプリを閉じて旅に出よう。

ちっちゃなちっちゃな旅に出よう。

ミーニージャーニー

今回は第一弾「池袋」である。

池袋といえば東京都内の主要エリアに位置する場所だ。

サンシャインシティをはじめとして、トーホーシネマ、

ビックカメラ、東武デパートや、西武百貨店など、かなりの人で賑わっている。

しかし、僕は今日はそういった場所を出来るだけ避けようと思う。

なぜなら、普段自分が行かない場所に行くことで新しい発見があるかもしれないからだ。

とりあえずスタート地点は池袋駅東口である。

ハンバーガーのいい匂いがして

一瞬入店して旅の終わりを迎えようかと考えたが思いとどまった。

というか僕は既に昼ごはんを食べていた。


あてもなくぶらぶら歩く。

今日は10月29日。

ハロウィーンが近い。

周りには防護スーツを着てマスクを被った人や

モグラ頭にアロハのシャツを着た人、

青い目をして中世ヨーロッパのような服装の女性がいた。

写真を撮って盛り上がっていた。

その何枚かの隅っこには確実に僕が写っていただろうけど、みんなは全く気にしない。

それじゃあどこからみんな気にし出すのかその絶妙なラインを探りたくなった。

カメラ目線でピースすることを100とした時、40くらいを狙いたい。

カメラ目線ではなくピースすると50くらいだろうか。

結論から言うとカメラ目線をせずに、手のひらの指を全てくっつけて、そこから中指と薬指の間だけ広げるスゴいやつをカメラに向かってやれば絶妙に気にしてくれるのではと思った。もちろん思うだけだった。


そんなこんなしていると

段々人通りが少ない場所に出るようになった。

人通りの多い場所。

そこには沢山の広告がある。

カラオケを勧めるキャッチの声。

ビルの屋上のディスプレイから流れるオリコンランキング。

わかりやすく目を引くような光量や色彩のディスプレイ広告。

みんな自分に向かって同時にずっと話しかけているような気がする。

基本全部無視する僕らのどこかに引っ掛かってくれと祈るように広告達は話し続ける。

だけれど99%僕たちはその声を無視する。

そりゃそうだ。

いちいちキャッチの人のティッシュを

「大丈夫です。ありがとうございます」と断り、

オリコンランキングに向かって

「今度聞いてみます」と報告して、

道ゆくギラギラした広告看板に

「ギラギラですねえ、すっごい目に入ってきちゃいます。興味がなくても。これちなみになんの看板…?あ。家電製品の!」とかコミュニケーションしてたら家に帰る頃にはヘトヘトに疲れてしまう。

だから僕らはどこかで無意識にスイッチをオフにするクセを体得する。

全てに反応していたらこちらの身が持たない。

だから低電力モードへの切り替えができるようになる。

小沢健二さんが連載しているエッセイ小説『うさぎ!』という本にこんなことが書いてあった。元々広告などが一切なく電気の通っていない山奥に住んでいた子供が、ラオス国の首都に着き、バスを降りた。するとその子は私たちが普通に無視して過ぎ去る広告一つ一つに足を止めて、数時間バス停から動けなくなってしまったという。彼には低電力モードがなく、全部の声にちゃんとしっかりコミュニケーションしてしまったのだ。低電力モードを持つ人、持たない人。どっちが良い悪いとかではない。でも思ったことがある。

人通りが多い場所を行くには低電力モードがおすすめだ。

ただ、うっかりスイッチを切り替え忘れると、

人通りの少ない街が全く持ってつまらなく見えてしまう。

僕は慌ててスイッチをオンにした。この広告が一切ない道で。

まず電線があったけど、その電線に建物から手をグワっと伸ばしてるのは写真中央の建物だけだなと思った。他の建物は別の場所からさりげなく電気を頂いているのか。じゃあなんでこの建物だけグワっと手を伸ばさないといけなかったのか。そんなことを考えてしまった。

次に良い匂いがした。

昼カレーの良い匂いだ。

匂いもある意味広告なのかもしれない。

でもこの匂いの元はどうやらアパートの一室で、僕らに食べされてくれるつもりはないみたいだったので、広告ではなかった。というか僕は既に昼ごはんを食べていた。

歩く歩く。

なぜか大通りに戻ってきてしまった。

ただ引き返すことはしたくないのでこのまま歩いてみる。でっかい建物も好きだから問題ない。てかあの建物だけ見ても30個くらい広告がある……やっぱ薬局は目立つなあ……あ、いけない。スイッチオフ。

そんな広告でも残りの1%で足を止めてしまうものがある。

今回足を止めた理由はズバリ「ショック」

チェーン店の回転寿司が物凄い値上がりしていたのだ。自分はこのチェーン店が1番好きなので動揺を隠せず止まってしまった。調べた所都内のみ高いらしい……先に進む。

グオーンとこちらに建物が迫ってくる。

こういう圧倒的な存在に近づくことが僕は好きだ。

だから僕はよく同じビルの一点を見つめながら歩いてビルが近づく様を楽しんでいる。周りからどう見られているかは置いといて。

面白いものを発見。

オレンジを4つまるごと搾って、その場で生オレンジジュースを作ってくれるのだという。しっかり生のオレンジが中に入ってる様子を透明なガラス越しに見せてくれるので説得力がある。しかし、僕はこの自販機がここに置かれたことを嘆いた。

なぜならこの場所でさえなければ僕には響いたからだ。

この場所には見覚えがあった。

4年前この場所にあったクレープ屋さんでクレープを食べたのだ。

そう。ここは芸術劇場の近くで、4年前の2018年に立教大学の入学式があった。

その際に家族と昼を食べることになってぶらぶら歩いて、ここに辿り着いたのだ。

そしてクレープ屋さんでクレープを食べた。

僕にとってこの場所の記憶は、そのクレープ屋さんの記憶で満たされていた。

僕は既に昼ごはんを食べていた。こういう時の為に辞書には「おやつ」という言葉が用意されている。

【バターとお砂糖のクレープ】という1番シンプルなクレープを頼んだ。

今日はフルーツやカスタードクリームや油マシマシやご飯大盛りなど、

最強にカスタマイズされた食事よりも、素材の味を素直に楽しめるシンプルなものが食べたかった。

食べると砂糖の素朴な甘さを感じた。

生地も外側はパリパリしていて、中はモチモチだった。

そういえば昔映画でこんな台詞を書いた。

「クレープは生地なの!だからカスタードとかで誤魔化しちゃだめなの!」クレープ食べ歩きサークル部長の言葉だ。

店によってクレープの違いはいくらでも存在する。

その違いはシンプルな塩バターを頼むことでハッキリする。

これはここだけの話だが、僕がクレープ好きの人に聞いたわけではなく、

きっとクレープを極めた人ならそう言うだろうなという想像で作ったものだった。

食べ終えて満足した僕は再び歩き出した。

公園である。

とりあえず少し身体を動かしてみようと思い

ボルダリングっぽいやつに挑戦してみた。

最近『のぼる小寺さん』というボルダリング部に所属する高校生の映画を観たからかやってみたくなったのだ。

無理すぎた。

キュッキョッ!みたいな音が足元から一度したきり

僕はそれ以上挑戦することを諦めた。

子供の頃はスイスイと横に移動できていたのに。

なんでだったんだろう。

多分それはあれだろう。

身体が小さくて、自分の身体を支える余裕があったんだろう。

小さくて軽い小鳥は空を飛べるけど、僕らが飛べないのは僕らの身体が重すぎるからだ。

飛ぶことに適していないからだ。

このボルダリングもそうで、僕の身体には適してないことがわかった。

疑問は解決したけど、永久にこの遊具を楽しめない身体になってしまったことに軽いショックを受けた。また軽い懐古主義にもなった。けれども、さっきクレープを誰の許可も得ずに食べることができたことを思い出して、再び今が楽しくなってきた。

その後蚊への献血を終えた僕は、

立教通りを歩いていた。立教大学が横にあった。

僕が4年間通っていた大学は埼玉にある新座キャンパスだったが、それでもなぜか池袋キャンパスは懐かしく思えた。

多分去年の3月から5月までの2ヶ月間くらいほぼ毎日ここの図書館に朝から晩までいたからだと思う。

その時は卒業制作の映画のシナリオを捻出していた。

さらに就活のエントリーシートを同時並行で書いていた。

その壮絶な記憶がこの門を前にすると思い出されるのだろう。

今ではどちらもなんとかなったがあの日々はだいぶ必死だった。

必死だからこそ今懐かしいと思えるのだろう。

よくよく考えてみれば1週間ダラダラ家で過ごした日々を懐かしいなと後から思うことはない。というかそういう日々は記憶に残らないから思い出せないのだろう。

ただ、必死に全力で日々を生きないと後から懐かしいと思えないのもそれはそれで寂しい気がする。例えば今日みたいななんの焦りもなく、ブラブラと歩き回る日を僕は忘れてしまうのだろうか。そうしたら懐かしいとすら思えないだろう。けど唯一救いだったのはこの旅を写真に撮って、記事にしたことだ。懐かしく思えるようにする為にも、こんなダラダラした日は記事にするに限る。

以上ミーニージャーニー池袋編でした。

新しい発見がなかなかあって楽しかったです。

かかった時間5時間20分。

歩いた距離多分5キロくらい?

あなたの旅も教えてくださいね。

(後ろを見ると立教大学が55年ぶりに駅伝へ出場することが喜ばれていた。おめでとうございます)

マモル

マモルです。作品を見ること、作ることが大好きです。ちょっと気を抜くとすぐに、折り畳み傘に髪の毛がひっこ抜かれてしまいます。気を引き締めて毎日生きてます。生き急ぎ過ぎないように。

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