アイドルと桜と卒業と、

卒業間近のアイドルを見るのが好きだ。

アイドルに特段詳しいわけではないけれど、
「今夜が卒業前最後のパフォーマンスになります!」なんてアナウンサーさんの声が聞こえてくると、思わず画面にしっかり向き合ってしまう。

“終わり”は、いつだって残酷なほど美しい。

ファンからしてみれば、残り少ない、その“グループのメンバーとして”の推しの姿を一瞬足りとも見逃したくない気持ち、寂しさ、やっぱり好きだ〜〜〜、今の表情やばい、この振りいいよな〜とか、とにかくいろーーーーーんな感情が入り混じるものだろうけれど、

その積み重ねを持たない私は、ただただ、その特別な美しさに見惚れてしまう。

もちろんアイドルもプロだから、一回一回のパフォーマンスに全力をかけていることだろう。しかしそれでも、どうしたって“終わり”は特別だ。

「この番組でのパフォーマンスは最後」という心持ちと「これからまだ何度だってパフォーマンスできるだろう」という状況では違いが生まれるのも当然の事だと思うし、それは一度として同じものが生まれない生のパフォーマンスならではの良さだ。

私がアイドルの「ラストパフォーマンス」に惹かれてしまうのは、その輝きがあまりに眩しく、それでいてあまりに儚いからだろう。

それはまるで満開の桜を見る時のようだな、と思うことがある。

桜が咲き誇るのは一年の内ほんの数日だ。その儚さ故に、桜は多くの人を惹きつける。花火だってそう。ばあん、と大きくて輝かしい花を咲かせたと思ったら、次の瞬間にその光は消えてしまう。

そんな儚さが、私はたまらなく好きなのだ。

永遠に続くものなんてないのに、私たちは「次がある」ことを信じて生きている

「また明日」「また今度」「今日の夜ご飯何にしよう」「新曲はどんなテイストだろうな」「このドラマ、次回も気になる〜!」
未来があると信じないことには、満足に日常を送ることすらできない。人と会う約束もできないし、人生は「次」の連続だ。

でも、何事にも「終わり」がある。

そして「これからも続いていくであろうこと」と「もうすぐ終わりを迎えるであろうこと」では、否応なしにも向き合い方は変わるのだ。

例えば、近くに住んでいていつでも会えると思っていた友人が、遠くに引っ越すことになったとしたら。

普段なら「いつでも会えるから」と数ヶ月は会わないし、下手したら半年、一年間会わないこともままあるだろう。
ところが、引越しが決まった途端にご飯に行く約束をして(なんなら引越しまでの1ヶ月の間で数回会うかもしれない)、こちらに帰って来たよと連絡が入るたびに「折角だから」と会いに行く。
どうしても許せなかった遅刻癖も「なんか、もう何でも良くなっちゃった」と急に気にならなくなって、そんなダメさも愛おしく感じてしまうくらい。

「終わらない」ということは「いつまで続く」ということで、それは時に中だるみや不満を生む。

「もう我慢できない」「あの人ならこうしてくれるだろう」「どうせあいつは○○だから嫌い」「もっとああしてくれたら」……

「終わらせられる」って、とても幸せなことだと思う。それに「終わり」を迎えるから、また新しい関係を築き始めることだってできるのだ。

終わりがあることは、きっと救いがあるということじゃないか。

卒業、という言葉を耳にすると、なんだか胸がザワっとして、それでいて美しいものに触れるような心地がするのは何故だろう。

今までに出会ってきた色とりどりの“儚さ”が、私の中を駆け巡るからだろうか。

「終わり」とともに訪れる新たな「始まり」を予感するからだろうか。

「終わり」があるから次が生まれる。
「始まり」が、生まれる。

私たちはいつも、次を、終わりを、そして始まりを目指して、今日を生きている。


ひなた

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。

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