涼
その道を曲がれば
階段を昇ればすぐ
すぐ帰り着けたのに
私たちは座った
駐車場
アスファルト
吹き抜ける風
すぐ帰り着けたのに
私たちは座った
座り続けていた
風を浴びると
そこに根が生えた
そこが居場所になった
時々蜜を吸った
まだ暑くなる少し前のこと
何の話をしていたんだろう
おばあちゃんがたまに野菜をくれた
畑はそこにある
あった 隣に そこに
夏が過ぎると
イルカのキーホルダーが増えていった
毎年恒例の贈り物
もらってばかりだったのかもしれない
ほんの二、三本先の道
違う名前の町
あんなにすぐそばだったのに
随分と遠い場所に思えた
あとちょっとで帰り着けるのに
私たちは風に身を委ね続けていた
吹き抜ける風を
いつまでも待っていた
written by...

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。
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