2022年ドラマ振り返り座談会!【後編】2022夏・秋(7~9月・10~12月期)ドラマ
2022年ドラマ振り返り座談会!【前編】は2022年冬ドラマ(1~3月期)・春ドラマ(4~6月期)をピックアップしてお届けしました。
【後編】では、夏ドラマ(7~9月期)と次々と最終回を迎えたばかりの秋ドラマ(10~12月期)を中心にお届けします!
《座談会メンバーはこの3名‼》
小学生の頃から、深夜枠のドラマまで一通り情報を把握するのが習慣。未視聴ドラマの録画が永遠に溜まっています。
新ドラマの初回放送日を一気に調べてスケジュール帳に書き込む時の幸せは、何物にも代え難い!基本的にリアタイしたい派なので、生活はドラマの放送時間を軸にまわっています。
昔からテレビっ子でしたが、ドラマ好き具合には年々拍車がかかっています。最近は専らTverで後追い派。涙脆いので、ティッシュ片手にドラマを見ることも少なくないです。
●夏ドラマ(7~9月期)
菅藤:夏、凄かったイメージあるなあ。
ひなた:凄かったですよねー。まず『魔法のリノベ』からいきましょう。『リノベ』すごい良かった。ダークホースというか、まあ見てみるか、くらいのテンションで見始めたらすごい面白くてびっくりしちゃった。
菅藤:脚本がヨーロッパ企画の上田誠さんなんだよね。
ひなた:そう、そこは流石で。
菅藤:あと演出!ドラマってさ、回によって演出の方が変わるじゃない。私、好きな方が演出に入っている作品だと、最初の3分くらいを見て「あ、今日絶対あの方が演出だ」って分かることがあって。それこそ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』の演出の塚原あゆ子さんは、好きすぎて一発で分かる。
ひなた・花村:おー。
菅藤:それと似たような感じで『リノベ』は監督の瑠東東一郎さん演出が特に好きで。毎回面白いのは大前提だけど、瑠東さんが担当される回は特に感情の持っていかれ方が一段上がる感じがするから、映像の力って凄いんだなって。カットの割り方とか、撮り方とか、詳しいことは知らなくても、感覚的にすごく好きっていうのがあって。それがあると作品自体の面白さが上がっていく感じがする。
ひなた:へー。私は「なんということでしょう」が好きだった(笑)
菅藤:毎回リノベしてたの凄かったよね。ビフォーアフターみたいな。
ひなた:しかも、本編じゃなくてエンディングのために毎回リノベをやってるっていう手の込み方に感動した。こだわりなんだろうなと思ったし。
花村:うんうん。
ひなた:あとテンポ感の良さとか、キャラクターが愛おしくなる感じは、上田さん脚本の良さなんだろうな。有川部長(演:原田泰造)ですら、あそこまで色が濃いと逆に見ていられたというか。
菅藤:確かに。あまりに”怪物感”が強かったから、「現実にこんな人いないよ~」とも思わなかった、っていう。
ひなた:怪物ってしっくりくる(笑)勇者のパートもあったくらいだし。
花村:そうだね。
ひなた:丸福の人たちとか、みんな愛しかったんですよね。
菅藤:愛しいって言葉はこのドラマにぴったりだね。
ひなた:うんうん。私は、小梅(演:波瑠)と玄之介(演:間宮祥太朗)が下手に恋愛関係にならないと良いなあと思いながら観ていて。だから途中で「あ~恋愛っぽくなってきた!?」って焦り、(笑)
菅藤:「同志」みたいな関係だったからね。
ひなた:そう、同志感が強かったから、それを恋愛って形にまとめてほしくなかったんですよね。最終的には同志・仕事パートナーとして、っていうのはちゃんと保たれた上での恋愛だったから、それが良かったですね。
菅藤:それで言うと『石子と羽男』も、パートナー関係がね!
ひなた・花村:そうだ!
菅藤:石子(演:有村架純)が大庭(演:赤楚衛二)と付き合い始めた時に「こんなの初めて見た!」と思って、すごい嬉しかったの覚えてる。メイン2人が男女で、ポスターだけ見たら、いわゆる”当て馬”は大庭だけど、そうじゃなかった!
ひなた:大庭が釈放されて、石子と羽男が出迎えるシーン最高でしたよね。同僚、同志、恋愛、先輩後輩とか、そういう全部、3人の関係性が成り立ってて。
菅藤:あのシーンはあのドラマのハイライトだよね。
花村:うんうん。
菅藤:羽男(演:中村倫也)が本当は石子のことが好きだけど、とか、好きで切なそうにしてる、ってわけでもないのが本当いいんだよね。完全に観察するの楽しい、みたいなモード。でも、石子が大切な人であることには変わりなくて。
ひなた:「恋愛感情抜きで大切である」っていうのが、男女間でも成り立つのがめちゃくちゃいいなって。
菅藤:ホントだよね。「男女間で友情は成り立つのか?」ってよく言うけど、友達でも恋人でもない関係も築けるんじゃない?っていう、すごい希望だったなと思う。「連帯」みたいな感じ。
ひなた:人と人との関係のあり方の一つとして、仕事のパートナーもあれば恋愛って形もあるし、家族って形もあるし、本当に色んな形があって、それが全部等しかったというか。恋愛だから、仕事だから、家族だから偉いとか、そういう描かれ方は一切してなかったし、意識的にそうしてただろうし。
花村:良いドラマだったよねえ。
ひなた:さて、これは語らねばならない。『初恋の悪魔』ですよ!
***『初恋の悪魔』トーク、盛り上がり過ぎてしまった結果……まさかの別記事にてお届けします!近日公開!***
●秋ドラマ(10~12月期)
ひなた:まずは『エルピス ―希望、あるいは災い―』の話しませんか!
花村:うんうん!
ひなた:情報が出た時点で「これはすごいドラマになるぞ」とは思ってたけど、その期待を軽く超えてきて。
菅藤:このドラマが放送に至るまでの経緯そのものがもう、エルピスで描かれているようなことみたいだから。色んな局に断られて、放送までに6年かかって。『エルピス』が腹を括って届けてくれたものが評価されて、これから他の局がどんどん色んな挑戦するようになったら面白いなぁ。まさに劇中でそういう台詞あったけど、「後追いだったらできる」ってことがあるかもしれない。もちろん、一枚岩ではない組織の中で頑張ってこられた方はきっと『エルピス』前にもいて......ただ、先陣を切ってくれた『エルピス』のことは、ずっと覚えていたいなと思う。
ひなた:ほんと、カンテレ(関西テレビ)制作ってところがミソですよね。
菅藤:村井さん(演:岡部たかし)がセクハラ親父のまま、物語の中であの立場に行ってるのがいいなと思ってて。改心して、全くセクハラしない人になっても、それはそれでなんか違うなと。
花村:私も、登場人物一人ひとりが、結構人間くさいところが好きで。どのキャラも、ちょっと嫌いなところがあるというか、みんなに「こういうところなんか嫌だな~」があって。そこに現実味を感じるし、だからこそこの作品が心に響いてくるんだろうな、って思った。
菅藤:確かにちょっとずつ嫌いなところある。
ひなた:「人間くさい」って言い方が、まさにそうで。登場人物たちも、物語の展開自体も、白黒はっきりつかない感じというか。本当にタイトル通りで、希望なのか、あるいは災いなのか、本来人間とか色んな出来事ってどっちにも転じる可能性・素質を持っているから。でも、ドラマとかってどうしても分かりやすくしてしまうというか、複雑なものをスパっと面にしてしまうところがあるじゃないですか。こういう「人間くさいもの」ってなかなか見ない。
菅藤:それをやるのは、きっと2時間の映画でも舞台でもなくて、テレビドラマっていう約3か月のスパンで毎週やるっていう形が最大限合ってるんじゃないかなと思う。村井さんとか、短い時間で見たら「最初嫌なこと言ってたけど、実はいい人だった」って思っちゃうかもしれない。
ひなた:浅川(演:長澤まさみ)も、主人公だから常にまっすぐ正義に行くとかじゃなくて、ちゃんと折れる時もあるし、葛藤してるし。観てる側もちゃんと好きでちゃんと嫌いになるの、ほんとに凄いなって。斎藤さん(演:鈴木亮平)も憎めないし。
菅藤:「絶対部屋入れちゃダメだって分かるのに、入れちゃうよねー」みたいなね(笑)それで言うと、今回日本のドラマで初めてインテマシー・コーディネーターさんが参加されたということで、それは画期的なことだなと思いました。インティマシー・シーンが浅川の"敗北"として機能していて、凄かった......
ひなた:あと『silent』も触れておかなきゃですね!
花村:すごい好きだった。でも、彼女と彼氏がいて、元彼が現れてそっちに行っちゃう、っていうところだけを見てしまうと、ずっとモヤモヤしてしまって。紬ちゃん(演:川口春奈)は何も悪いことしてないけど、展開だけを追った時に、すんなり受け入れられないまま見てしまったところはちょっとあるかなあ。
菅藤:私も恋愛面に関してはそういう感じがあった。一方で、最後まで観た時に、人間は「伝えたい」っていうことを諦めない生き物なんだな、そのことを描き切ってくれたな、嬉しいな、って。湊斗(演:鈴鹿央士)が、当て馬としてじゃなくて、湊斗の人生を生きてたし、幸せを描くために新しい恋愛をさせなかったのが、すごい良かった。ここに来て、ちょっと見た事のないドラマだったと思います。
花村:たしかに「伝える」ってことをすごく重要視しているドラマだったと思う。話す言葉だけじゃ無くて、文字とか、態度や行動で、伝えようとしていたなって。ドラマの主軸は恋愛的なところにあったかもしれないけど、恋人や家族、友人それぞれが、相手を想って一生懸命伝えようとしているところに、このドラマの魅力を感じた。
ひなた:あとは『霊媒探偵 城塚翡翠』『invert 城塚翡翠 倒叙集』も画期的でしたよね。シーズン1・2と分けちゃうのは上手いなあと。シーズン1のバディに愛着を持って観てるから「この話は完結だよ、次から新しいドラマです」と言われると、悪い方のロスが起こらないというか。新しい気持ちで、良い意味でロスを埋めてくれる新ドラマ、みたいな。
花村:シーズン1にめちゃくちゃ騙されたし、面白かったから、これを十話分に引き延ばしたものも観てみたかったなって、少し思う。もちろんシーズン2も面白いんだけど、原作から持ってきた時に時間の都合上省いちゃうところをもっともっと丁寧に描いたバージョンも観てみたい。
ひなた:うわ~、分かるなあ。基本1エピソード1話で、ちょっと駆け足な感じがしてたから、1エピソードに2話くらいかけてやってもいいのに、とはすごく思った。
菅藤:他だと『PICU 小児集中治療室』も触れておきたい!。
花村:あ~。
菅藤:医療ドラマってもうやり尽くされたと思ってたら、全然そんなことなかった。1話で初めて「どうすれば今日救えなかったこの命を救えたでしょうか」っていう反省会のシーンを観た時、もう凄いと思った。同じチームがつくってた『監察医 朝顔』は解剖・真相究明パートと人間ドラマがちょっとバラバラなイメージがあったのね。『朝顔』大好きだけれど。でも『PICU』は病院の中と外がなめらかに繋がっている感じがあって、観てて面白かったし、心地良かったな。
花村:私は医療ドラマそんなに得意じゃないというか、難しくて挫折しがちで。『PICU』も難しいんだけど、なんかすごく大事なメッセージをたくさんもらっている気持ちになった。5分くらいの名場面集観るだけで大号泣しちゃうくらい。素敵な贈り物をもらったようだった。
菅藤:私も毎週ありえないくらい泣いてた、首まで濡れるくらい(笑)
ひなた・花村:(笑)
菅藤:恋愛モノの話じゃないけど、『PICU』も医療シーンをやるためのドラマじゃなかったというか。医者が主人公なんじゃなくて、主人公が医者だった、みたいな感じがあって良かったな。......これ、図らずも今日のテーマみたいになったね。
ひなた:ほんとですね。そういう人間ドラマが丁寧に描かれてる作品が増えるのはすごく嬉しいし、また来年のドラマが楽しみになりますね!<了>
大ボリューム座談会、未公開トークをまとめた【特別編】も近日公開予定!お見逃しなく!