朝ドラ『らんまん』感想レビュー:第2週『キンセイラン』〜“金色の道”が指し示す先〜
第2週『キンセイラン』(4月10日~14日放送)
ときめきポイントde振り返る1週間!
◆第1週からバトンタッチし、少し成長した万太郎(演:小林優仁)たち。少年期を演じた皆さんも本当に愛おしかったです!その笑顔や健気さ、まっすぐさに観ていてパワーをもらいました!今週だけなのが寂しいですね……。
◆寺脇康文さん演じる蘭光先生が本当にカッコいい!!力強く、パワーに満ち溢れていて、お茶目さもあり……。先生の「学ぶこと」「自然と共に生きること」の本髄に迫る生き方は、万太郎の大きな道標となりそうですね。
◆匍匐(ほふく)前進で植物観察をする万太郎&蘭光先生コンビ!空からの俯瞰した眺めも相まって、すごく可愛らしかった!興味を惹かれた先に無我夢中となる二人は、どこか似た者同士なのかもしれません。
◆名教館にて、武家の子・佑一郎(演:岩田琉生)らにいじめられている万太郎を必死に庇う竹雄(演:南出凌嘉)。自分の身を挺してまで万太郎を守ろうとする姿に胸打たれました……。その後「少し面白かった」と笑う太々しさも持ち合わせるところ、今後の成長が楽しみです!!!
◆最初は敵対していた佑一郎が、学問を通して自然と万太郎を認めるようになり、最後には共にキャンプし再会を誓う仲になる胸アツ展開……!万太郎を認めていく過程ではなく、認めた後の時間を丁寧に描いてくれたのも嬉しいポイントでした。
◆祖母・タキ(演:松坂慶子)の迷い、揺れ動きが描かれているのも好きでした。頑なに変わることを拒むのではなく、リアルな葛藤を感じて、苦しくなります。
第2週レビュー:〜“金色の道”が指し示す先〜
幕末から明治を迎え、激動の時代の中で9歳となった万太郎。その時代の波は、峰屋にも万太郎にも影響を及ぼしていた。
そう、万太郎が名教館で学問を学ぶことになったのである。
現代の私たちが「勉強」と聞くと、あまり良いイメージが浮かばない人も少なくないかもしれない。しかし、良き師との出会いは根源的な学びの楽しさを教えてくれる。
万太郎ら名教館で学ぶ子どもたちにとって、蘭光先生との出会いがそれだ。特に、名教館へ通うことを拒んでいた万太郎にとっても、その出会いは鮮烈なものだっただろう。
「おまんらみんなあーーみんなあ名前があるがじゃ」(万太郎)
万太郎は師と出会い、名前を知らなかった植物たち一つ一つに名前があることを知る。
母・ヒサの大好きな花も、何度踏まれても強く伸びるその草も、一つ一つに名前があるのだ。それは、万太郎が待ち侘びていた“出会い直し”ではないか。
名前を知るということは、その草が、他のどの植物でもない「その草」だと知るということだ。
そうして「母の好きな花」は「バイカオウレン」になり、「バイカオウレン」は、いつ・どこに咲く、どんな花なのか等、その性質を知っていく。人は学ぶことで、何度だって“出会い直す”ことができる。それはまさに、学問だ。
学問とは、目の前の物や人を「知りたい!」と願う衝動そのものではないか。「知りたい」という願いは、自分の心を映し、そうして得た知識が、自分をつくっていく。
「先生の言うたとおりじゃ。文字では心は震えんかったにーー」(万太郎)
12歳になり、たくさんの知識を得た万太郎は「知る」喜びから「体感する」喜びを学んでいく。山に足を運んで、川の流れを眺めて、出会った植物の名前を照らし合わせて、葉を触り、匂いを嗅ぎ、時に食し、知識を自分の身体に落とし込んでいくのだ。そうして、万太郎の世界がまた一歩豊かに広がる時、彼の心は強く震える。
「心が震える先に金色の道がある」(池田蘭光)
峰屋の当主として「変わらないものを守り続ける」ことを求められる万太郎。そこには、これまで峰屋を守り支え愛してきた、全ての人たちの想いが詰まっている。しかし、万太郎の「金色の道」はそこにない。時代が大きく変化する時、峰屋にとっての「金色の道」はきっと、酒造りに強く心震わす人物を当主に迎えることではないか。
「学ぶこと」は、心が震える先を知ることであり、それはつまり己を知ることだ。己を知り、また心惹かれる物事や人を知り、その繰り返しこそが金色の道をつくっていく。
万太郎たち一人ひとりの「金色の道」の行方を、引き続き見守っていきたい。
その道標はキンセイラン。きっと金色に光り輝いているだろう。
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。