関東大震災は「2人の夢」をどう変えた?【朝ドラらんまん週間レビュー】ーー寿恵子(演:浜辺美波)の言葉に秘められた想いとは??
第25週『ムラサキカタバミ』(9月18日~22日放送)
第25週レビュー 〜2人の夢〜
万太郎(演:神木隆之介)と寿恵子(演:浜辺美波)が植物図鑑の完成を目前に控えた、大正12年9月1日。
関東にて、大震災が発生した。その日は強風で、地震によって上がった火の手はあっという間に燃え広がり、辺り一帯は焼け野原になった。死者は10万人を超えたという。
万太郎たちの住んでいた十徳長屋も崩壊。家族は避難を余儀なくされた。
「これは捨てん!捨てん!これは残すもんじゃ!この先の世に、残すもんじゃ!」(万太郎)
どこで火事が起こるか分からない中、家族総出で植物標本を持ち渋谷まで歩いた万太郎たち。他人から見ればたかが枯れ草、しかしそれは命を懸けてでも守りたいものだった。
「40年間、2人で頑張ってきたんです。私もいつじゃち同じ気持ちですから」(寿恵子)
図鑑を完成させ、世の中に届けること。図鑑を手に、園ちゃんの元へ向かうこと。
それは2人の夢で、2人の40年間の全てだ。例え全てが失われてしまったとしても、2人が懸けてきた時間と想いが消えることはない。
そんな2人を一番近くで見てきた子どもたちもまた、複雑な気持ちを抱えながら2人の志を理解し支えてきた。2人の夢は、家族の夢でもあるのだ。
「あなたは特別だから書けて当たり前って、そう思いたくないんです」(寿恵子)
震災からおよそ1ヶ月。万太郎は消失してしまった図鑑の原稿執筆に再び着手していた。消えた40年間を取り戻す作業は、一体どれほど途方も無く、また悔しくやるせないことだろうか。
万太郎の逞しさを「特別」だと「あなたは天才だから」と捉えることは簡単だ。しかし寿恵子はそうしない。こんな時だからこそ、万太郎の隣に立ちたいと願う。「一人の人間・槙野万太郎」の一番近くで寄り添っていたいと願うのだ。
「わしの心を照らすがは、いつでも寿恵ちゃんだけじゃ」(万太郎)
そんな寿恵子がいるから、万太郎は前を向いていられる。互いが互いを照らし合い、2人は再び図鑑完成への道を歩き出す。
「何があったち、必ず季節は巡る。生きて根を張っちゅう限り、花はまた咲く」(万太郎)
その生命力はまるで、植物のようではないか。
いつか大輪の花を咲かせ、その花が人々を笑顔にするその日まで、2人は金色の道を冒険し続けていくだろう。何度だって季節を越えて。
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。