万太郎の見つけた「誇り」とは??台湾派遣を経て物語は最終章へーー神木隆之介×浜辺美波・朝ドラらんまん第22週レビュー!
第22週『オーギョーチ』(8月28日~9月1日放送)
第22週レビュー 〜誇りとは何か〜
「分かっちょります。国が言葉を押し付けゆうがは。ほんじゃきわしは、永久にとどめるがです。学名として」(万太郎)
万太郎(演:神木隆之介)は、里中(演:いとうせいこう)や岩﨑(演:皆川猿時)からの推薦で、学術研究員として台湾に行くこととなる。ピストル所持の指示に従わず、また禁じられていた現地語での会話を試みる万太郎。彼は、帰国後も現地の言葉に準じた学名を発表することを決める。
「教授……これでドイツを見返してやれますね」(細田)
「ああ……。もうあんな惨めな思いは終わりだ。今こそ日本人であることを誇りに思う!」(徳永)
一方、ドイツ留学から帰ってきた徳永(演:田中哲司)と細田(演:渋谷謙人)は、日本独自の研究実績を作り、ドイツなど欧米諸国と同等に肩を並べることに固執していた。
野宮(演:亀田佳明)と波多野(演:前原滉)が世界初の快挙を成し遂げたことで、徳永は日本の権威が認められると泣いて喜ぶ。
徳永たちは、留学の最中に一体どのような経験をしたというのだろう。
また、台湾の人々は自らの言葉を奪われ、どのような思いでいるだろう。
「野宮さん、論文を書くんだ。(中略)書いてください。あなたが見つけたんだ!」(波多野)
徳永が咽び泣いている傍らで、波多野は野宮に論文を書くよう強く勧める。元は画工であった野宮。しかし今は植物学者なのだと、波多野は野宮に強く断言する。
世界に誇る大発見など、誰だって自分の名前で発表したいはずだ。しかし、野宮と共に長年研究をし続けてきた波多野だからこそ、野宮へ最大限のリスペクトを持ち、彼の発見を尊重するのだ。
そこにあるのは卑屈さや惨めさなどでは決してない。研究者としての、人としての「誇り」である。
(作中で何度も繰り返されているが)雑草という草花はないように、人にも国にも上下はないはずだ。
万太郎は、細田から台湾の言葉を学名に使わないよう命じられてもなお、現地の言葉を使用することを決して譲らない。
「わしは、どこまでも地べたを行きますき。人間の欲望に踏みにじられる前に全ての植物の名前を明らかにして、そして、図鑑に永久に刻む」(万太郎)
それが、植物学者・槙野万太郎の進む「金色の道」だ。
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。