朝ドラ『らんまん』感想レビュー:万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)がすれ違う…第10週

第10週『ノアザミ』(6月5日~9日放送)

ときめきポイントde振り返る1週間!

印刷所の面々が本格登場!渋かったり厳つさがあったり、今までの登場人物たちとはまた違ったカッコ良さがありますね!職人さんへのリスペクトを感じます。どこか峰屋の蔵人たちを思い出しました!

万太郎(演:神木隆之介)が来た時のために里見八犬伝を用意する寿恵子(演:浜辺美波)!!!

◆砂まみれで帰宅した万太郎を見た竹雄(演:志尊淳)。若を守りたいと願う故のすれ違いが切なかったですね……。

竹雄の「万太郎」呼び〜〜〜〜〜〜〜!

「寿恵子トライ!」「キ〜〜〜プ!」言語の壁を超えて、懸命にクララ先生へ食らいつこうとする寿恵子がso cute!!!!!

◆印刷所のみんなでうどんを啜るシーン、一家(!?)団欒で愛おしかったです!

万太郎×波多野(演:前原滉)×藤丸(演:前原瑞樹)のクサイ小芝居がかわいすぎる……!

◆わざわざ大学まで万太郎に会いに来た寿恵子。楽しそうにはしゃぐ万太郎を見つめる瞳が切なくてたまりません。

◆寿恵子、すっかりダンスが上手になっている!!!素敵!!!

◆寿恵子の乗る馬車と道端で屈んでノアザミに話しかける万太郎。人々を蹴散らし、物を踏み潰して駆け抜けていく馬車と、いわゆる「雑草」と呼ばれる草花に寄り添う万太郎の対比が大変ニクイ演出……!

第10週レビュー 〜違う道だからすれ違う〜

その“すれ違い”は、きっと必要なものだったのだと思う。

高らかに「寿恵子にはしばらく会いに来ない」ことをまつ(演:牧瀬里穂)らへ宣言した万太郎は、植物学の学会誌を世に出し、植物の名を世界に広げることを夢見て一歩を踏み出し始める。

一方の寿恵子は、万太郎を待ち続ける日々にもどかしさが募っていく。二人はまだ、お互いの気持ちについて何も言葉を交わしていないのだ。

しかし、言葉よりも雄弁に物語るものもある。薔薇の絵、自分の好きなものを相手にも読んでほしいと願うこと、相手のことを話す時の表情、目の輝き、会えないことへの憂い。

万太郎のことを考えて気落ちする寿恵子に、まつは「奥の手」を授ける。

「あんたはあんた自身のためにここにいるの。だからいつだって自分の機嫌は自分でとること」(まつ)

他の誰でもない、自分自身のために自分がここにいること。誰かの望みを叶えるためではなく、自分の願いを叶えるために生きているということ。

妾という「夫を待ち続ける立場」を生きてきたまつにとって、自分のために生きるとは一体どういうことなのか。その問いに向き合うのは、何もまつや寿恵子に限った話ではない。

「わし、佐川に帰ろうと思います」(竹雄)

竹雄はこの発言をすぐに撤回するが、本当に選択肢の一つではあったのだろう。万太郎に「十徳長屋を出て、印刷所に住み込みで働こうか」と言い出され、竹雄もまた思い悩んでいた。

印刷所で働きたいという万太郎に対し、竹雄が最初に見せた反応は「なぜ峰屋の当主が」「峰屋のみんなに顔向けできない」と、まさに奉公人そのもの。峰屋の奉公人としての使命、責任、そしてプライドに溢れていた。しかし、竹雄はもう万太郎の奉公人ではない。万太郎は峰屋を捨ててきたのだ。

では、二人の関係は一体何であろうか。万太郎は竹雄を「相棒」と呼ぶが、随所に主人と奉公人としての名残は残っている。まるで母と子どものようにも見えるし、長年連れ添った夫婦のようですらある。

そこにはいつも竹雄の献身があった。二人の立場や環境は変わっても、竹雄の「万太郎を支えたい」という一心だけは変わらない。では、竹雄は何のために「ここにいる」のか。

「わしはもう若を当主とは思いませんきね。ただの槙野万太郎と思いますきね」(竹雄)

この宣言は、竹雄が本当の意味で奉公人としての自分を捨てた瞬間だったのだろう。井上竹雄が井上竹雄自身のために、自分の居場所を選び、相棒を選ぶ。「万太郎!」「竹雄!」そう対等に呼び合った時初めて、二人の間に根付いていた主従関係は消えていく。

自分自身のために生きるとは、例え自分のやりたいことが「誰かのために働く」ことであっても、それを自分の意志で自分のためにやる、ということではないか。

「奉公人だから」働くのでも「妾だから」帰りを待つのでもない。
「好きだから」会いに行く。「好きだから」会わない。「好きだから」学ぶ。「自分がやりたいから」ダンスをする。「自分がやりたいから」働く。

『あんたはあんた自身のためにここにいる』のだから。そう生きる道のりこそが、自分にとっての『金色の道』を辿ることなのだろう。

「思うちゃあせんと叶いませんきね。思い描くことができたら後は実現するだけです。道が見えちゅうなら歩いたらえい」(万太郎)

万太郎が周りの反発すらも味方につけ、いつの間にか人々を虜にしてしまうのは、自分なりの『金色の道』を信じ抜く真っ直ぐさであり、その強さ故ではないか。

竹雄の道は、万太郎のためにあるわけではない。竹雄自身のためだけにある。
同じように寿恵子の道も、高藤、万太郎、まつ……誰のものでもなく、寿恵子自身のものだ。

万太郎、竹雄、そして寿恵子の道がどのように延び、どう交わっていくのか。

「張り詰めちょったら速う走ることらできません。健やかに楽しゅう笑いゆう方がよっぽど速う遠くまで行ける……(中略)……ちゃんと寝て食べてピカピカ笑うちょってください」(竹雄)

その旅路が、ピカピカ笑ちょれる道でありますように。それが「全速力」なのだから。


ひなた

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。

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