『くしゃみのふつうの大冒険』
おわりに
さて、「おわりに」ということは、これでみなさんとは「さようなら」ということです。
つまり、これでくしゃみの物語もおしまいということです。
いま、くしゃみは、私の机のすぐ横で、熱心に原稿用紙と向き合っています。
でも、なにを記しているのかは、全然教えてくれません。少しでも話しかけようとすると、キッと睨みを効かしてくるので、安易に音も立てられないのです。
それほど神経質になるのなら自分の家で作業に取り組めば良いものを、そこは「嫌だ」と駄々をこねて、「鉛筆削り、貸して」と手を出します。
まぁ、なんだって良いんですけれどね。
くしゃみは先日、「誰かにとっての流れ星のような人生にしたい」と、私に語ってくれました。
一瞬で過ぎ去る人生なら、その一瞬だけでも光り輝いて、朽ち果てたい、と。
見ることのできた人には、一瞬でも見られたことに幸福を感じてもらえるような。見逃してしまった人には、見逃してしまったことを残念がってもらえるような。生きることに対する誰かの希望に、少しでもときめきを感じてもらえるような。そんな存在になりたい、と。
だから、この『くしゃみのふつうの大冒険』というお話も、これで終わらせなくてはいけません。こんなに力で満ち溢れているくしゃみを、引き止めるわけにはいきませんから。
でも、彼ならきっと引き止めても、こちらの言葉なんて聞こうともせずに、駆けていってしまうかもしれませんね。
幸か不幸か、「これこそが自分の進むべき道だ」と一度気がついてしまったら、己を動かすその熱は、なにがあっても止まらないものですから。
あらっ、いつの間にかこんな時間です。
みなさんももう、お家に帰る時間でしょう。
私たちももうそろそろ、夕ごはんの支度をはじめなくてはいけません。ここらでお開きにしましょうか。
さぁ、気をつけて帰ってくださいね。
忘れものはないですか?
あらっ、くしゃみが一瞬顔をあげて、「じゃあね」と手を振りましたよ。玄関までは来なさそうですね。まぁ、放っておいてやってください。きっと、別れもおざなりになるほどに、いまが大切なときなんです。
それでは、みなさん、さようなら。
遊びにきてくれてありがとう。

~おしまい~
作・絵 池田大空
















