「愛の花」をあなたへーー「あらゆる命には限りがある」から『らんまん』に咲き誇る!【最終週「スコエザサ」レビュー】
第26週(最終週)『スエコザサ』(9月25日~29日放送)
第26週(最終週)レビュー 〜「愛の花」をあなたへ〜
「理学博士になるんだ。槙野万太郎!」(波多野)
昭和3年。
寿恵子(演:浜辺美波)が万太郎(演:神木隆之介)のために買った広大な土地に二人の「園」ができ、図鑑の完成も見えてきた頃。
万太郎は、波多野(演:前原滉)から理学博士にならないかと誘いを受ける。しかし、万太郎は恐縮してその誘いを断ろうとしてしまう。
「傲慢だよ。槙野万太郎は自分の意志でここまで来たって思ってるんでしょ?槙野万太郎がここにいるのは、時代なのか摂理なのか……そういうものに呼ばれてここにいるんだ」(波多野)
万太郎の偉業は彼一人だけで成し得たものではない。そして、後の世へと受け渡されていくものでもある。
波多野が「賞賛と引き換えに、学問に貢献する立場と義務を」引き受けたように、万太郎にも理学博士という立場を引き受ける義務があるのだ。
「次の方に渡すお手伝い、私もしなくちゃ」(紀子)
理学博士となった万太郎の偉業は、娘の千鶴(演:松坂慶子)やアルバイトの紀子(演:宮崎あおい)によって、次の世代へと受け継がれていく。自らが生きる時代の中、出会うことのできた人や事物が、自分にとっての金色の道を浮かび上がらせるのかもしれない。
「あらゆる命には限りがある。植物にも人にも。ほんじゃき、出会えたことが奇跡で……今生きることがいとおしゅうて仕方ない」(万太郎)
図鑑完成には、万太郎の友たちが力を貸した。
波多野、藤丸(演:前原瑞樹)、野宮(演:亀田佳明)、佑一郎(演:中村蒼)、丈之助(演:山脇辰哉)、虎鉄(演:濱田龍臣)………
植物学教室のように、またかつての十徳長屋のように賑わう槙野宅。そこに集う友たちは、さながら「八犬士」のようではないか。生きていれば、それぞれの冒険の先が交じり合うこともあるのだ。他にも、綾と竹雄の新酒づくりに藤丸が協力したように、波多野と野宮が共に「見えないもの」を追い求めて研究したように、万太郎と寿恵子が、二人で図鑑発行を志したように。
「こんなに明るいお酒、ありがとうございます。まるで晴れた空みたいな……」(寿恵子)
「ありがとう。嬉しい。ありがとう」(綾)
綾と竹雄の新酒「輝峰(きほう)」も完成した後のこと。
遂に『槙野日本植物図鑑』が完成する。
全3,026種、「らんまん」に草花が咲き誇る、万太郎と寿恵子の人生が詰まった図鑑だ。最後のページに載ったのは、新種の「スエコザサ」。学名にも寿恵子の名が入ったササである。
「草花にまた会いに行ってね。そしたら……私もそこにいますから」(寿恵子)
命には限りがある。それでも、万太郎は草花を通して寿恵子に会いに行くことができる。
そして我々視聴者もまた、草花を見て、万太郎や寿恵子・また二人の周りで咲き誇った人たちに何度だって会うことができるのだ。
「おまん、誰じゃ?」(万太郎)
この世にはきっと、まだ見ぬ草花がたくさん生きている。決して、雑草という草はないのだから。
今日も、生命がらんまんに咲き誇っている。
編集後記
まさに『らんまん』な生命の輝きに溢れた作品、ついに最終週となりました。万太郎と寿恵子をはじめとした、みんなの笑顔が次々に思い浮かんできます。
『らんまん』ロスになることを心配していた筆者ですが、最後まで丁寧に積み重ねられた物語に胸がいっぱいで、今は晴れやかで穏やかな気持ちです。
毎週お届けしてきた『らんまん』レビューも、遂に最終回!
この半年間、作品のあたたかさとエネルギーに支えられて生きてきた筆者にとって、全26回にも渡ってレビューを綴ることができたのは非常に幸せなことでした。(作品全体を振り返る記事も書けたら良いなと思っています!)
本レビューをお読みいただいた皆さまに、厚く御礼申し上げます。
最後になりますが、
『らんまん』キャスト・スタッフの皆さまに最大の賛辞と心からの感謝を!
この先も寿恵(!)永く受け継がれていくであろう名作を、本当にありがとうございました。
『らんまん』、あいしちゅう!
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。