【朝ドラ『らんまん』第23週レビュー】寿恵子(演:浜辺美波)がいよいよ新たな冒険へ!人にとっての「幸せ」とは何か?

第23週『ヤマモモ』(9月4日~8日放送)

第23週レビュー 〜新しい冒険へ〜

「新しい冒険なんです。私、思いっきりやってみたいです。自分の力を試してみたい。」(寿恵子)

寿恵子(演:浜辺美波)は、渋谷に自分の店を開きたいと万太郎(演:神木隆之介)に打ち明ける。かつて「冒険の旅に出たい」と万太郎と一緒になることを選んだ寿恵子。八犬伝が大好きな彼女の頬には、牡丹のアザが、その中には光る玉が、眩しいくらいに輝いている。

「もういっぺんだけ……もういっぺんだけ、挑めるかもしれんじゃろう?」(竹雄)

新しい冒険を志しているのは、寿恵子だけではない。竹雄(演:志尊淳)綾(演:佐久間由衣)も、腐造を出さないような新酒づくりを決して諦めていなかった。二人の夢に力を貸したいと名乗りを上げる者も現れた。藤丸(演:前原瑞樹)だ。

「必要とされるの、いいなって。俺の、これまでの時間、何にもなかったとは思いたくない。俺だって、何か果たしたくて!」(藤丸)

冒険へと旅立つのに、遅いも早いもない。自分が「これだ」と思うものに出会えた時、手を伸ばしたいと思った時を逃さないこと。必要なのはその勇気だ。

「酒造りの研究、俺がやりたいって。(中略)菌類なら何でも好きなんです。目立たないけど実はどんな環境にも適応するところ。形を変えてもしぶとく生き残っていくところ。」(藤丸)

自分の「好き」を大切にし続けること。何かを成し遂げたいと自分の可能性を信じること。
藤丸は語学が苦手だが、この研究のためなら外国の書籍を読むと宣言した。冒険のお供には、これまで自分が積み重ねてきた経験・時間の全てが居てくれるのだ。

「歩いて。観察して……。万太郎さんならきっとそうする。……行こう。渋谷が私の横倉山になるまで。」(寿恵子)

寿恵子の冒険もまた、これまでの寿恵子の人生・万太郎と共に過ごしてきた時間が背中を押してくれている。
寿恵子は自分の足で渋谷を歩き、自分の目で渋谷を観察し、渋谷の良さ・好きなところをたくさん発見していく。自分自身の力で、冒険への活路を切り拓いていく。

しかし「冒険」とは、決して楽な道ではない。
万太郎は今も植物学者としての働きによって十分な稼ぎを得ているわけではないし、野宮(演:亀田佳明)は世界的大発見の末、大学から去ることを選んだ。

それでも、人生が続く限り「冒険」もまた続いていく。
周りから見れば貧乏長屋に住み続けている「不幸な」万太郎も、あの長屋が大好きで、植物の研究という「好き」を追い続ける幸せの中にある。実質的には大学を追い出されたように見える野宮も、清々しい表情をして、笑顔で大学を去っていった。

「君が見たいと願うものを俺も見てみたかった。それだけだったんだよ。ここまで連れてきてくれて、ありがとう。」(野宮)

自分の本懐はどこにあるのか。誰か/何かに「ありがとう」と心から思える瞬間に巡り合えるのか。

「幸せ」を決めるのも「冒険」の行く先を決めるのも、自分自身だ。


ひなた

kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。

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