ジョイマン・寺田心登場の朝ドラ『らんまん』第19週レビュー:万太郎(演:神木隆之介)が「初めて」知ったこととは?
第19週『ヤッコソウ』(8月7日~11日放送)
第19週レビュー 〜「一人」だけれど「一人じゃない」〜
万太郎「のう。寿恵ちゃん。初めて知ったがじゃ。」
寿恵子「何ですか?」
万太郎「わしは一人じゃない。ひたすら野に行ったら きっと誰かと歩けるき。」
寿恵子「(笑って)うん。」
万太郎(演:神木隆之介)の周りは、いつも賑やかだ。
小さい頃から竹雄(演:志尊淳)や峰屋のみんなが、東京に出てきてからは十徳長屋・植物学教室のみんなが、そして誰より寿恵子(演:浜辺美波)という最愛の人が、万太郎のそばで笑っている。例え人がいない山奥でも、万太郎は大好きな植物たちに囲まれている。
そんな彼が、初めて「一人じゃない」ことを知ったと言う。万太郎は、ずっと「一人」だったのだろうか。
「この山で、君が好きな草花はありますろうか」(万太郎)
山中にて遍路宿屋の息子・虎鉄(演:寺田心)と出会った万太郎は、虎鉄が好きな「名も分からず、自分だけが知っている植物」を紹介してもらう。東京に帰ると、虎鉄の学校の先生が見つけた名の分からない草花たちが送られてくる。
その「好き」や「知りたい」という気持ちは、万太郎の“原点”ではないだろうか。
野を歩き、目に留まった植物に心惹かれる。名前が分からなくても、その分類も性質も何も知らなくとも、ただ「好き」なのだ。「好き」であることに理由はいらない。「好き」だから、もっと知りたいと願う。
植物学を志すことはなくとも、毎日歩く山道で、家で、仕事場で、草花を愛(め)でている人々が世界にはたくさんいる。草花について何の知識も持たなかった頃の“万太郎” は、今日も各地で生きているのだ。
子どもの頃からたくさんの人に囲まれていても、植物に夢中になるその時、万太郎は「一人」だ。しかし、この世界には「一人」で自分の好きなものを慈しんでいる人が大勢いる。
だから、万太郎は「一人じゃない」。
「それでも……お寿恵さんは私のお友達です」(聡子)
「一人じゃない」ことを知ったのは、万太郎だけではないだろう。寿恵子は聡子(演:中田青渚)のピンチに「友達として」駆けつける。聡子は寿恵子が「友達」であることを明言する。二人は夫からは独立した一人の人間同士として、互いを大切に思う。
波多野(演:前原滉)と藤丸(演:前原瑞樹)は、万太郎と大学で共に研究することが叶わなくなっても、槙野家で植物同定の作業に協力する。
竹雄と綾(演:佐久間由衣)は「二人だけの問題」として、峰屋の暖簾を下ろしたことを万太郎に告げる。
十徳長屋は今年も住民総出でドクダミを抜く。来年、その中に丈之助(演:山脇辰哉)はいないかもしれない。
「これが、当たり前ながじゃねえ。みんなあ自由に出てくことも流れてくることもできる。それでも、つながりが消えるわけじゃない。どこでも、生きていけるがじゃね」(綾)
人は皆「一人」で、人とのつながりを握りしめながら生きている。
だから、私たちは「一人じゃない」。
レビューあと書き
先週まで苦しい展開が続いていたので、今週からは心機一転、明るい展開から始まるかな〜と思いきや、じっくりじっくり再生のプロセスが描かれていましたね。丁寧な作風に改めて心を打たれました。
印象的だったのは、田邊夫妻をモデルとした小説の一件。家にまで押しかけた人々の姿を、現代のSNSにおける誹謗中傷に重ね合わせて観ていた方も少なくないのではないでしょうか。事実を知ろうとしないまま自分の「正義」に酔いしれる人は、いつの時代にも存在するのかもしれません。
万太郎と虎鉄の出会いも心に残りましたよね。佐川の町で「草好き」と言われていたところから「先生」と呼ばれるまでになった万太郎。何だか感慨深いですね……。奇しくもプラントハンターのような仲間ができた万太郎。これから描かれていく植物や人との出会いも楽しみです!
細かすぎる!?「らんまん」なときめきポイント
・まつ(演:牧瀬里穂)さん、随分と長い間、寿恵子と万太郎の側にいてくれましたよね。気丈に振る舞いながら、優しくあたたかく二人をサポートする姿に愛が溢れていました。
・かわいいかわいい千歳ちゃん〜〜〜〜〜〜!
・郵便配達のクセが強い!なんだコイツ〜〜〜!!!(配達員さんの中の人をご存知でない方は、ぜひ「ジョイマン」と検索してみてくださいね!ヒゥィゴゥ!!!)
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。