タキ(演:松坂慶子)が守り続けたものとは何だったのか?【NHK朝ドラ『らんまん』感想レビュー:第13週】
第13週『ヤマザクラ』(6月25日~30日放送)
涙なしには観られなかった第13週「ヤマザクラ」
満開に咲き誇る桜のように、前半パートの集大成とも言える素晴らしい1週間でした。
まずはレビューからお届けします!!!
第13週レビュー 〜接ぎ木されてゆく命〜
「家ゆうがは何じゃろうのう?血筋、金、格式……何を守ってきたがじゃろう?」(タキ)
一つの時代の終わり。
タキ(演:松坂慶子)が必死に守り続けてきたものも、時代の変化によって揺らいでゆく。その変化に順応していくのか、抗っていくのか。
「今更……何じゃあ!これまで散々本家と分家を区別して……」(豊治)
タキは峰屋や本家、万太郎(演:神木隆之介)たちを守るため、分家を押さえ付けてきた。峰屋以外の酒屋も、峰屋のことを良く思っていないかもしれない。
以前タキは「何かを選ぶとは、何かを捨てること」だと万太郎に言い聞かせたが、まさにタキは自分にとって守るべきもののために、様々なものを切り捨ててきたのである。
そんなタキが、自分は何を守ってきたのかと疑問を口にし、分家に頭を下げたのだ。
「それよりも今ここにおる おまんらあの幸せが肝心ながじゃ。この先を健やかに幸せに生きていく。家の願いじゃのうて、己の願いに生きていくことが」(タキ)
思えば、タキはずっと葛藤してきた。万太郎の幸せを願う気持ちと、当主として万太郎を育て抜くという責任の狭間で。綾(演:佐久間由衣)の好きなように酒造りに携わらせてあげたい気持ちと、女は穢れだとされてきた歴史との間で。
夫と息子が急逝し、義娘にも先立たれ、峰屋という大店と孫たちを残されたタキ。彼女はただ彼女なりに、自分にとって大切なものの幸せを守ろうとしてきたのだろう。
「今日からわしらあ、家族になるがじゃ。血のつながりじゃのうて、縁(えにし)でつながる家族にのう。」(タキ)
タキは、綾・万太郎と家族になったその時からずっと、皆の幸せを願ってきたのだ。
天寿を全うした大きな桜も、接ぎ木されて新しい命の一部となっていく。そしていつか満開の桜を咲かせ、万太郎たちを「らんまん」に彩ってくれる。
「おまんは生まれた時から、そしてこの先もずっと、わしの希みじゃ。」(タキ)
命は有限だ。でも、希みはこれからも生き続けていく。
万太郎は今日も、まだ見ぬ植物との出会いを求めて歩き続ける。「はじめまして」と出会うことが、“己の願い”であるから。
「誰にも気付かれていないけど、そこにいる子。生きている子。その子たちを万太郎さんだけが気付いてあげて、見てあげるの。」(寿恵子)
そうして、命は永遠に繋がっていく。
あと書き
いや〜〜〜、良い最終回でしたね!(違う)
寿恵子(演:浜辺美波)さんの白無垢姿やお色直しの衣装は筆舌に尽くし難い美しさでしたし、綾×竹雄(演:志尊淳)がついに結ばれたり(いきなりキスなんてオトナ〜〜〜!!!)、万太郎と竹雄の別れの挨拶があったり(二人の積み重ねてきたものが溢れ出したようなお芝居に、胸が揺さぶられました……)とにかく見どころだらけな第13週でした!
そして何より、タキさん!厳しくも愛のある喝がもう聞けないのかと思うと寂しさでいっぱいですが、どこか晴れ晴れとした気持ちで見送ることができるのは何故でしょう。
体が弱っていき、新しい時代の訪れを感じながらも、最後まで自分や周りと真っ直ぐに向き合い続けるタキさん。第1週からの演じ分けもお見事で、松坂慶子さんの力強いお芝居に何度も惚れ惚れしてしまいました。
タキさん、今までありがとうございました!!!
細かすぎる!?「らんまん」なときめきポイント
◆月曜日
・万太郎の脳内でぐるぐる回るイマジナリー波多野(演:前原滉)&藤丸(演:前原 瑞樹)!なんだか分からないけれど爆笑してしまいました。
・良い声の人が集まる呉服屋さん!(演:三山ひろし・小野大輔)
◆木曜日
・竹雄も思わず「何ちゅう顔しちゅうがじゃ…」と声が漏れてしまう、万太郎の泣き顔!
・佐川に大畑夫妻とまつ(演:牧瀬里穂)×文太(演:池内万作)がいるだけで胸アツ……!!
・峰屋の大店っぷりに緊張する義平さん(演:奥田瑛二)可愛い!イチさん(演:鶴田真由)のツッコミもまた良いんですよね〜〜。
◆金曜日
・お祝いの席の料理、豪華で美しくて美味しそう〜〜〜!
・菅原大吉さん演じる豊治の怒り。ハッとさせられました。
・息子の伸治(演:坂口涼太郎)や紀平(演:清水伸)もそれぞれ違ったリアクションが生まれていて、分家の三人は毎度お芝居が細かく、思わず観てしまうんですよね。憎たらしいけれど憎めない三人にも久しぶりに会えて嬉しかったです!
・満開のヤマザクラ、綺麗……
・「らんまん」タイトル回収!!!からの第1話のオープニングまで回収!良い最終回でした!!!(だから違うって)
kikusuku編集長のひなたです。演劇とテレビドラマと甘いものと寝ることが好き。立教大学大学院 現代心理学研究科・映像身体学専攻・博士前期課程修了。