夜な夜なピクニック

桜田実和

kikusukuライターのミワです。
お芝居と喫茶店が好きな、ハスキーボイスの舞台人。
そこそこのまともさと、たまの異常さを買われて、東のボルゾイという劇団にいます。
岡崎京子さんと吉澤嘉代子さんの描く“特別なおんなの子”になりたい。

10年間都会に通い続けているわたしよりも

上京して5年目の君のほうが

よっぽど都会の人の顔が上手い

頭の中よりも絡まっているメトロの路線図

まだ見ぬ相手の名前

     飴玉を転がすように

          口の中で小さく呟く

本当の名前を知らない相手との魂の共鳴

冬は、はやくて寒いから、自転車に乗れない

黒ひげのこと

みんなに囲まれて、剣を刺されて、おまけに飛び出す運命なんて可哀想

と話す友達のかわいい横顔

SNSの写る画面スクロールする指の回数と不安が比例して

ふたりで齧り付いたすももの甘さ 近くで吠えていた市場には入れない犬

わたしたちの秘密基地

息を潜めて

アイコトバ

月明かりが頼り

気付かれないように

そうっと、そうっと

わたしたちがこどもでいられる場所

扉を開けたらそこは

夜な夜なピクニック

君の眠たそうな声/わたしが眠りに誘えるなら/そのままでいいよという祈りを込めて

おやすみバイバイ/と言ったの

またね

ミワ

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